11月27日、「月はどっちに出ている」(シネカノン)、「マークスの山」(松竹、アミューズ、丸紅)などで知られる、映画監督・崔洋一氏(享年73)が膀胱がんで亡くなった。鬼才監督は生前、代表作に出演した大女優が迫真のラブシーンを演じるまでの舞台裏について、アサ芸記者に証言をしていたのである。
今年1月にがん闘病を公表していた崔監督は4月、「ラスト・ショー」と題した、最後の監督作品の上映と併せたトークイベントに1週間連続で出演した。結果的に、これが公の場で披露した最後の元気な姿となってしまったが‥‥。
歯に衣着せぬ物言いは故人の真骨頂で、同ステージでも観客を楽しませていた。アサ芸記者にも、時に笑みを浮かべながら貴重な裏話を明かしてくれたことがあった。
話題が04年に公開された「血と骨」(松竹、ザナドゥー)の撮影秘話になった時のこと。
崔監督は自身の出自ともなる在日コリアンをリアルに描いた作品でも知られるが、同作は最高傑作のひとつだ。監督デビュー作となった「十階のモスキート」(83年、ATG)での起用から縁があり、テレビ朝日系「TVタックル」や俳優として映画「御法度」(松竹)などでも共演して親交のあった、ビートたけし(75)が主演。崔監督は原作を読んで「漆黒の闇を持った」暴力的、怪物的な主人公・金俊平を演じられるのは「たけしさんしかいない!」と本人に直談判して快諾を得た。
その後、企画が継続したまま、最終的には5年ほども進行せずに時間が経過していく。そこへ、全貌が固まるより前に「たけしさんの相手役をやりたい」と自ら名乗りを上げる女優が現れた。凛とした雰囲気のある美人女優・鈴木京香(54)だった。
「主人公が犯して自分の女房にしちゃう役だよ。でも『私、やりたい』って直接、俺んとこに来たんだよ。ただ、ひとつだけ聞いてくれってね。『乳房の露出はどうしても生理的に難しい。やらなきゃいけないとは思うけど、どうしてもできない』って。単純に度胸の問題だけではなくて、女性にはいろいろあるわけでね。まあ、プロデューサー的に言うと、ビートたけしと鈴木京香っていうんだったら、これはもう絶対ねえ。しょうがねえなと思って、わかりましたって話だったんだけど」
映画の撮影が本格的に動き出す前、たまたま京香がたけしとパーティーで出くわす一幕があったという。すでに同作の共演が決まった後のことだった。
「彼女が挨拶しに行ったの。たけしさんと1回、飯食うなり、お酒飲みたいなと思って、お誘いしに行ったんだって。そしたら、たけしさんがズルズルズルッと逃げちゃったって言うんだよ。京香さんが来ただけで、3メートルから5メートル離れちゃう。で、『私、嫌われてるのかしら』って俺に相談しに来たわけだよ。『京香さんは闊達な人だけど、カッカッカって堂々と“鈴木です”とかっていったら、照れ屋だから下がっちゃう人なんだよ』って言ったんだけど、彼女、本当に悩んでたね」
そしていよいよ、激しい濡れ場の撮影日が訪れる。その前日、崔監督は改めて京香とサシで話し合いの場を持ったという。
「やっぱり、『十分わかってるんですけど、どうしても何かの都合で胸ってことになると厳しい』って。それでも、さらさない分、上から揉んだり、中突っ込まれたりするのは全然構いませんって。『それ、たけしさんに伝えてください』って言われてね」
場面はワンカットで長回しの撮影。予期せぬ事態もありえる。崔監督はこう念を押したそうだ。
「万が一さ、下にも手がいくから、アソコに手がいく可能性あるよ。それは頼むね。たけしさんの手が入ってきたら拒まないでね」
これを受けた、京香の反応が振るっていた。
「そしたら、京香さんの目がキラリとしてね。『大丈夫』って。さすがだね! アソコをいじくっていいですってさ」
畳の上でたけしにのしかかられたノースリーブ姿の京香が吐息を漏らしながら淫靡に悶え続ける。荒々しく腰が何度も振られ、生々しく股間に打ちつけられるシーンは映画史上屈指の濡れ場として名高い。合掌。