福永祐一がJRA調教師試験に合格した。来年の2月末をもって、騎手を引退する。これにより今後の騎手の勢力図がどう変わっていくのか、占ってみたい。
福永は2010年から12年連続して年間100勝を達成し、11年と13年にはリーディングジョッキーにもなった。今年も96勝(12月9日現在、数字は以下同)しているため、記録は更新されそうだ。12年連続100勝は、あの武豊もできなかったことで、誇ってもいい。
ということは、来年からはこの100勝が他の騎手に流れるわけだが、最も恩恵にあずかるのは岩田望来だろう。エージェントが福永と同じ「凄腕」小原靖博氏だからだ。
望来は19年にデビューして以降、37勝⇒76勝⇒88勝⇒94勝と尻上がりに勝ち鞍を伸ばしている若手のホープ。しかし、重賞レースでなかなか勝ち星をあげられず、勝負弱いと評されることも多かった。ようやく勝ったのは、今年2月19日の京都牝馬ステークス(GIII)で騎乗したロータスランドである。
他にも重賞を勝てない理由はあった。期待馬の多くは福永や外国人騎手にいってしまい、なかなか回ってこなかったのだ。来年3月からは福永がいなくなるため、チャンスが増えることは間違いない。ひょっとすると、リーディングジョッキーの座を争うようになるかもしれないのだ。
今村聖奈も、今以上にいい馬に乗る機会が増えるだろう。現在、彼女は短期免許で来日する外国人騎手の影響で「小原軍団」から離れ、他のエージェントの世話になっているが(規定により、エージェントが扱える騎手は4人まで)、一人減るため、小原氏のもとに戻ると思われる。そうなれば、望来とツートップを組むこともあるのではないか。少なくとも最近の流れからして「小原軍団」のもう一人、岩田康誠よりも優遇されるはずだ。
もちろん、福永が厩舎を開業した暁には、今村、望来とも大事にされることは間違いない。ちなみに、福永は技術調教師として1年間、ベテラン調教師のもとで修行する。再来年の3月に、自らの厩舎を持つ予定だ。
(兜志郎/競馬ライター)