師走は文字どおり、あっという間に訪れ、そして過ぎていく。今年も残すところわずか。今週のメインとして行われるのは、朝日杯FSである。
17年から最終週に新たに組まれたホープフルS(中山芝2000メートル)が、来春の皐月賞、ダービーを占う大事な一戦としてGIに昇格したこともあり、この朝日杯FSは、まさに2歳馬、特に牡馬の王者決定戦という趣に変わった。
つまり、来春のクラシックを占う一戦というより、早熟な馬たちが今後どう羽ばたいていくかを見届ける一戦だ。昨年はこのGIを勝ったドウデュースがダービー馬に輝いたが、18年のアドマイヤマーズが翌年のNHKマイルCを制したように、来春以降のマイル路線で活躍する馬を絞り込む、きわめて重要な重賞と捉えるべきだろう。
とはいえ、デビュー間もない若駒同士の一戦。なかなか難解で簡単には決まりづらいGI戦である。
過去のデータを見てみよう。02年に馬単が導入されて以降、これまでの20年間、その馬単での万馬券は8回(馬連は1回)。この間、1番人気馬は5勝(2着5回)、2番人気馬は6勝(2着3回)。1、2番人気馬によるワンツー決着は3回。堅い時は堅いが、平均して順当に収まってはおらず、中穴傾向のGIと言ってよさそうだ。
ということで、来春のNHKマイルCを目指し、勝ち負けできるスピードと決め手を兼ね備え、素質を秘めた馬として期待したいのが、レイベリングだ。
抽選対象馬(9分の8)で、しかもこれまで1戦のみ。11月末にデビューしたばかりで経験不足ではあるが、強敵ぞろいのここに伍しても十分通用するとみて狙ってみたいのだ。
とにかく、その前走の新馬勝ちの内容は鮮烈で、強いの一語だった。前半は少し行きたがるところもあったが、その後は落ち着いて追走。手応え十分で直線を向き、いざ追い出すと矢のような伸びで他馬を圧倒、最速の上がり脚を披露して、2着馬を3馬身半も切り捨ててみせたのだ。
新馬戦としては走破時計も上々で、さらに追えばもっと時計は詰められた、という印象だった。
「期待どおりの内容で勝ってくれた。素質はかなりのものです」
鹿戸調教師はそう胸を張って愛馬を褒め称えたが、だからこそ、陣営は即GI挑戦を口にしたわけだ。
バランスの取れた実に品のある好馬体で、しかも血統が抜群。今、競走界を席巻するフランケル(14戦全勝、英2000ギニーなどGI10勝)産駒で、母の父もGI香港マイルの勝ち馬。母系も一族に活躍馬が多数いる欧州の一流血脈とあっては、期待しないわけにはいかない。
1週前の追い切りは、前走からのレース間隔がそう開いていないことから、Wコースで半マイルから軽めだったが、リズミカルで軽快な動きを見せていた。
「テンションは上がらず、実にいい感じできている。通用していい」
と鹿戸師、厩舎関係者は口をそろえており、陣営の期待度はかなり高い。
人気のドルチェモア、オールパルフェなど、逃げ・先行馬が多く、展開も向きそう。良馬場なら、この素質の高さに賭けてみたい。
穴中の穴として注目したいのは、バグラダスだ。
新馬戦からの2戦は逃げて1、4着。3戦目の前走(1勝クラス1着)は4番手で追走。抑える競馬が身についたのがプラスに働いての好結果だった。
こちらは、北米の一流血脈。距離の不安もなく“一発”があっていい。