皐月賞、ダービーに続く三冠競走の一つ、菊花賞が今週のメイン。3000メートルの長丁場で覇を競う伝統の一戦だ。
昔はよく荒れる波乱含みの一戦として知られていたが、ここ何年かは比較的穏やかに収まっている。しかし、今年はどうだろう。穏当に決まるかどうか。簡単に収まりそうにないムードが漂っている。
というのもダービー1、2着馬の名がないばかりか、東西のトライアルレース、セントライト記念を制したリオンリオン、神戸新聞杯を圧勝したサートゥルナーリアも出走してこないのだ。
かつてこんなケースはなく、22頭の登録馬(フルゲートは18頭)を見ても、絶対視できるような馬が既成勢力に見当たらない。おまけに登録馬のいずれも3000メートルを走った経験がないのであれば、混戦とみられても当然である。
一昨年こそ馬単で万馬券になったものの、このところ順当に収まっていたことは前記したが、今年の結果はどうあれ、人気順を答えるだけでも難しそうだ。
いちおう、皐月賞2着、ダービー3着、そして神戸新聞杯2着のヴェロックスが最有力とみられるが、父親はスピードを誇ったジャスタウェイ。母系もスタミナが豊富とは言い切れず、3000メートルはベスト距離かと問われれば、うなずくことができない。
一方、他の有力どころはどうかとなると、長丁場に対する不安は、そうはない。しかし、GIを制するだけの力量は怪しいところである。
となると、一線級と言われる馬は少ないものの、最後の直線に入るまで勝負が決まりにくいということで、胸突き八丁のかなり激しい攻防戦になるであろう。
まずは過去のデータを見てみよう。02年に馬単が導入されて以降、これまでの17年間、その馬単での万馬券は7回(馬連は4回)。この間、1番人気馬は7頭勝っているが、2着はわずか1頭。2番人気で勝った馬はおらず、2着が4頭。1、2番人気馬によるワンツー決着は1回のみだ。
過去のデータを踏まえて今年の顔ぶれをあらためて見てみると、どうしても下馬評どおり、簡単に決まるとは思えない。
しかし、だからといってスタミナが豊富というだけで力量が伴わない馬は推せない。難解ではあるが、イチオシしたいのは、レッドジェニアルだ。
秋初戦となった神戸新聞杯は、サートゥルナーリアに完敗、4着に敗れたが、これだけで見捨てるわけにはいかない。春の京都新聞杯を勝っており、続くダービー(8着)でも、しまい強烈な末脚で勝ち馬とコンマ8秒差の勝負を演じている。能力が高いのは確かなのだ。
しかも前走の神戸新聞杯は、ダービー以来4カ月ぶりの実戦で、体重が前走比12キロ増と重め残りの仕上がり状態だった。それでいて勝ち馬と1秒差、2着ヴェロックスとはコンマ5秒差なら捨てたものではない。十分巻き返せる、とみるべきだ。
休み明けを使われたことで、この中間は順調そのもの。馬体は締まって張りがあり、大幅な良化ぶりをうかがわせている。ならば狙っていいのではないか。
父キングカメハメハはダービー馬で、母の父マンハッタンカフェは菊花賞、天皇賞・春の勝ち馬。長丁場はドンと来いである。
近親、一族にはスズカコバン(宝塚記念)、リキエイカン(天皇賞・春)がいる程度で取り立てるほどの血統ではないが、世界的名種牡馬ミスタープロスペクターの3×4の近親配合馬(奇跡の血量)というのは、なんといっても魅力。よほどの道悪にならないかぎり、大きく狙ってみたい。