東京都は昨年末、新築一戸建て住宅の屋根などに太陽光パネル設置の義務化を正式に決めた。都政関係者が言う。
「『日本の屋根は空いている』という小池百合子都知事の強い訴えのもとで実行された、全国初の条例です。彼女が環境大臣の頃から考えていたという案件だけに、20年越しの悲願成就には大満足だと思いますよ」
都内の二酸化炭素排出量のうち、住宅など家庭からの割合は約3割とされ、都は太陽光パネル住宅の普及で削減につなげたい。そのため、一戸建て住宅を含む延べ床面積2000平方メートル未満の新築建物について、大手住宅メーカー約50社に設備設置を義務付けたのだ。
小池支持派はこの条例を「日本全国に定着させた夏季のクールビズ以来の、素晴らしいカーボンニュートラル案だ」などと絶賛し、川崎市など他都市部でも追随する動きが見られる。
だが、ある都議会自民党関係者は「問題点だらけ」として、次のように指摘するのだ。
「問題のひとつは、金持ち優遇策であること。都内で戸建てを新築すれば、数千万円以上のカネがかかる。それができる人は一部の裕福な人のみでしょう。新築コストがやや高くなるとはいえ、太陽光で得られる電気の多くは建築主が自家消費するので、富裕層は電気代が安くなる。一方、新築できない賃貸や古い家に住む庶民は、ますます高騰する電気代に苦しむことになり、結果として格差拡大につながる。しかも今回の条例に絡み、300億円もの税金が投入されるのは、不公平極まる」
二つめは、太陽光パネルの大半が中国製であること。その多くが、ジェノサイド(民族大量虐殺)が疑われる新疆ウイグル自治区産と言われるが、問題解決は曖昧なままだ。
「条例施行は25年春。つまり前年に都知事選を控えていることから、小池氏が出馬するのであれば、大きな争点となる。出馬しないなら、別の都知事で条例を潰すまでですよ」(前出・都議会自民党関係者)
小池氏肝いりの太陽光パネル設置義務条例は、まだ二転三転しそうな気配だ。
(田村建光)