かつて巨人のリリーフエースとして活躍した角盈男氏(57)が、衝撃の告白をした。今年2月に突然、前立腺ガンであることを宣告されたというのだ。はたして、その症状は?
「もう少し検診に行くのが遅かったら、全身に転移してもおかしくない状態。ふだん、検診なんか行かないのに、たまたま行ったのはツキがありました」
角氏は、努めて明るい表情で語る。東京・恵比寿で経営するバーに毎晩のように顔を出し、野球解説の仕事にも支障はないという。
それにしても、入院も手術もすることなく「前立腺ガン」と闘うとは、かなり異例なこと。その発端は今年2月のことだった。
「何年も健康診断は受けてなかったけど、僕の後援者に『大阪で日帰りの検診があるからつきあえ』って言われて、それで一緒に行ったんですよ」
角氏に自覚症状はまったくなかったが、検査の結果、数値が思わしくない。そのため、紹介状を書いてもらって、2月26日に、東京医療センターに行き、2度目の再検査を受ける。そして医師は告げた。
「角さん、前立腺ガンのことを勉強しましょう」
やけにあっさりとした告知だった。角氏は「先生、僕、ガンなんですか?」と聞き返したが、現役時代のことを思い出した。
「僕らリリーフ陣はピンチでマウンドに行くことが多い。その時に『マイったなあ』と思うか、『よし、ここを抑えたらヒーローだ!』と思うか‥‥。幸い、前立腺は完治が可能なガンなので、これは立ち向かおうと思ったね」
前立腺ガンは、近年、急激に発症率が高まっており、50代から年代を追うごとに比率は高くなる。ガンの中では進行は遅いが、角氏のように57歳という年齢は決して楽観できない。
そして角氏は、摘出手術や放射線治療ではない別の形を選択。
「より効果が高い『重粒子線治療』を選んだんです」
聞き慣れない名前だが、これはガンのある部位に狙いを定め、ピンポイントで照射する最先端の治療である。
日本では4カ所しか設備がなく、さらに費用も高額で、完治まで約2年で300万円以上。それでも角氏は、家族に負担をかけることなく「重粒子線治療」を選べるツキがあった。
「実は少し前から女房が、特約の保険を掛けていたんですよ。月額200円でこうした治療に対応できるもので、最終的にはかかった費用が返済されます」
さすがは80年代の巨人を支えた強運の持ち主である。さて現在の角氏は、重粒子線の治療に向けての「ステップ1」の段階。
「ホルモン療法をやっています。ガンの進行は男性ホルモンの増加に関連するので、それを抑える薬を飲んでいます」
副作用により、体力が2~3割ほど落ちるという。そのため角氏は、それまで30分程度だった日課のウオーキングを1~2時間に増やし、体力低下を防ぐ。食生活も変化はあったが、アルコールに関しては豪快なままだという。
「店ではシャンパンを1本、それからワインを2本は飲んでるかな。そこはいたって絶好調(笑)」
ホルモン療法から3カ月が経過したが、10月からは重粒子線治療に入る。都内に住む角氏が週に4回、千葉で治療を受けるのは大変なことに思えるが──、
「ゴルフに行ったと思えばね(笑)。手術したり、入院したりってことに比べたら、はるかに負担は軽いよ」
今、角氏は検査を受けることの重要性をあらためて口にする。
「僕もそうだったけど、検査を怖がらないこと。別に1泊とか使わなくてもいい。今の医療技術なら血液や尿の検査を内科で受けるだけでも、ある程度のことはわかるから」
最後まで悲壮感を見せずにアドバイスするのだった‥‥。