南海トラフの東側か西側でマグニチュード8以上の超巨大地震が発生した場合、1週間以内に反対側で同規模の地震が続発する確率は最大で通常時の3600倍に達する──。
1月10日、東北大学の福島洋准教授らのチームがまとめた衝撃の研究結果が、学術雑「サイエンティフィック・リポーツ」に論文として発表された。
駿河湾から九州沖へと伸びる南海トラフのプレート境界では、およそ100~200年間隔で超巨大地震が繰り返し発生してきた。その発生パターンとしては、東側と西側の震源域のプレートが同時にずれ動く「全割れ地震」と、東側か西側のどちらか一方の震源域のプレートだけがずれ動く「半割れ地震」の2タイプが知られている。
そして、南海トラフ超巨大地震が90年に1回の頻度で発生すると仮定した場合、東側か西側の震源域における超巨大半割れ地震の発生から1週間以内に、反対側の震源域で超巨大半割れ地震が続発する確率は100~3600倍になるというのだ。地震学の専門家が言う。
「南海トラフ東側の震源域で発生する超巨大地震は東海地震とも呼ばれ、同様に西側の震源域で発生する超巨大地震は、南海地震とも呼ばれています。その連動性については多くの専門家が指摘しており、1854年に東側で発生した安政東海地震の約32時間後には、西側で安政南海地震が発生しています。また、1944年に東側で発生した昭和東海地震の約2年後には、西側で昭和南海地震が発生した。それだけに、今回の続発確率100~3600倍という試算結果には、専門家の心胆を寒からしめるものがあります」
だが、こうした専門家が懸念しているのは、続発地震だけではなかった。ズバリ、半割れ地震であるか全割れ地震であるかを問わず、南海トラフで超巨大地震が発生した後の『富士山大噴火』への懸念なのだ。地震学の専門家が続ける。
「事実、1707年に全割れ地震として発生した宝永地震の49日後、富士山の6合目付近で『宝永の大噴火』が始まりました。宝永の大噴火は、平安時代の『延歴の大噴火』『貞観の大噴火』と並ぶ『3大噴火』のひとつと言われ、周辺地域に壊滅的な被害をもたらしたほか、遠方の地域にも多大な被害を与えたのです」
今後30年以内に70~80%の確率で発生するとされている南海トラフ巨大地震とともに、忘れてはならない歴史の教訓だろう。