突然我慢できないような尿意を感じたり、トイレまで我慢ができずに尿漏れしてしまうことがある──。もしかしたら「過活動膀胱」を発症しているかもしれない。
これは膀胱の神経が過敏になり、尿が十分にたまっていないうちに、自分の意思とは関係なく膀胱が勝手に収縮してしまう状態を指す。最近の調査では、40歳以上の男女の8人に1人が、発症していることがわかっている。高齢になるほどその割合は増し、70歳以上の20%以上、80歳以上の35%以上が「過活動膀胱」に悩まされているという。
原因は、他の疾患に伴って発症するものと、生活習慣が要因の2つに分類される。前者は、脳梗塞やパーキンソン病などの脳神経疾患、尿路感染症など。後者は、肥満や加齢に加えて便秘、高血圧、糖尿病などがリスク要因だ。
主な治療法は、薬物療法とあわせて、ダイエットによる体重減と水分摂取のコントロールを行う生活指導だ。特に体重減は「過活動膀胱」のガイドラインでも有効性が高いといわれている。ただし、無理なダイエットは体調を崩してしまうおそれがあるため、バランスのよい食事を心がけることが必要だ。水分摂取に関しては、アルコールやカフェイン、炭酸飲料には利尿作用があるため、頻尿を引き起こしてしまうからなるべく控えることが望ましい。タバコに含まれるニコチンは、膀胱を収縮させる作用があるため、こちらも控えたほうがいいだろう。他にもトイレを少し我慢する膀胱訓練、排尿に関わる筋肉を鍛える骨盤底筋訓練も有効といわれている。
命にかかわる病気ではないため過度な心配は無用だが、頻繁にトイレに行くことは日々の生活も楽しめなくなってしまうおそれがある。もし、日中トイレの回数が8回以上ならば、医療機関の泌尿器科を受診した方がいいだろう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。