死亡欄の記事でもよく目にする「心不全」。心臓病と間違われやすいが、これは病気ではない。
「心不全」は、心臓に何らかの異常があり、心機能が低下して、全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態。心臓は全身に血液を送り出すポンプとして休むことなく働いているが、心臓に酸素や栄養を送る冠動脈が詰まってしまったり、さまざまな原因で心臓の壁が厚くなってしまうと、そのポンプ機能がうまく働かなくなり「心不全」に陥るのだ。
「心不全」の状態になると命を失う危険性が高く、急性心不全で入院した人の約22%が1年以内に亡くなるといわれている。
主な原因は、心筋梗塞や虚血性心疾患、心臓弁膜症、心筋炎、心筋症、先天性心疾患などの「心臓の病気」だ。これらの病気を発症すると心臓にかかる負担が大きくなり、心機能が低下してしまう危険があるのだ。
「高血圧」も「心不全」の原因となるケースが多い。「高血圧」患者の場合は、高い血圧に耐えるために血管の壁が厚く硬くなっていく。そのため、心臓はより強い力で血液を押し出す必要が出てくるのだ。この状態が続くと、心筋が厚くなり心臓に十分な血液を送り出すことができなくなってしまうのだ。
風邪などと異なり、一度発症した「心不全」が完治することはない。そのため、継続的な服薬が必要になる。
予防法は、生活習慣を見直して、心臓に負担がかかる危険因子を取り除いていくしかない。前述した高血圧だけでなく、高血糖や肥満、動脈硬化に陥らないためには、バランスのよい食生活や適度な運動、疲れやストレスをためないよう心がけたい。
喫煙や飲酒、塩分のとりすぎなども心臓に負担をかけるリスクがあるため注意が必要だ。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。