日本を代表するパンクバンド「アナーキー(亜無亜危異)」のギタリスト、藤沼伸一が初メガホンを取る永瀬正敏主演の映画「GOLDFISH」が、3月31日から公開されることになった。
同作は、藤沼自身がアナーキーというバンド活動の中で体験した事実をモチーフに描いた、人間ドラマ。劇中に登場する「ガンズ」は、80年代に社会現象を起こしたパンクバンドだ。人気絶頂の中、メンバーの1人が傷害事件を起こして活動休止になり、30年後にリーダーの不純な動機をきっかけに、永瀬扮するイチが中心となって再結成へと動き出す…というものだ。
デビュー42周年を迎えてなお、熱狂的ファンを持つ彼らが、シングル「ノット・サティスファイド」でメジャーデビューしたのは80年。バンド名はセックス・ピストルズの楽曲「アナーキー・イン・ザ・UK」からとったものだ。デビュー当時は、メンバー全員が逆立てた髪に国鉄の作業服(ナッパ服)を着用。反抗的な歌詞と、鬱屈したエネルギーをぶつけるような激しいビートで、若者たちの圧倒的支持を得ることとなる。
だが映画同様、86年にはメンバーの1人が傷害事件を起こし、懲役2年6月の実刑判決を受けたことで、「THE ROCK BAND」と改名。その後、活動停止と再開を経て、18年にオリジナルメンバー4人で「亜無亜危異」名義で活動を再開した。昨年末の「New Year Rock Festival」にも出演。圧巻のステージングで、往年のファンを歓喜させている。
70年代後半に産声をあげたロンドン・パンクが「反逆の音楽」以外の何物でもなかったように、多大な影響を受けたアナーキーの楽曲にも反権力、反権威といったものが多い。その代表曲が、デビューアルバム「アナーキー」に収録された「東京・イズ・バーニング」だった。
この曲はザ・クラッシュ「ロンドンは燃えている!(London’s Burning) 」のカバーで、原曲の王室批判よろしく、歌詞でターゲットにされたのが日本の皇室だった。
そんな話題性もあり、アルバムは10万枚を超えるセールスを記録。しかし、政治団体からの猛抗議によって「東京・イズ・バーニング」は放送禁止に追い込まれる。さらに、この曲が収録されたアルバムも、回収措置が取られることになる。
そんなことから、のちに再発されたアルバムからもこの曲は削除され、CD化の際も未収録。
しかし、94年に行われた2夜限りの再結成ライブを収録したライブ盤「ANARCHY LIVE 1994」には、ピー音なしで収録された。当時の熱気をそのまま伝えているのだ。
余談だが、氷室京介率いるBOOWYのデビュー時のキャッチコピーが「エアロスミスとサザンオールスターズとアナーキーを足して割ったバンド」。
業界内でもアナーキーのファンは多く、尾崎豊をはじめ、山下達郎、甲本ヒロトのほか、薬丸裕英、小泉今日子、中村獅童などが「熱狂的ファン」を公言した。日本の音楽シーンに物足りなさを感じている人はぜひとも、耳を傾けるべき。圧倒されること、間違いなしだ。
(山川敦司)