「鳥だ!」「飛行機だ!」「スーパーマンだ!」「いや、中国の軍事用気球だ!」「撃て~!」…ズドーンッ…!!
そうした会話がなされたかどうかは不明だが、アメリカ軍が2月4日から12日までに中国が飛ばした気球などの飛行物体を、計4回も撃墜した。外信部記者が話す。
「中国側は『民間の気球で気象などの研究用』と主張していますが、アメリカ側は4日に撃墜した気球については、軍事施設を標的に通信を傍受できるアンテナが搭載されていて『軍事目的の気球』とみています。ただ、中国は『アメリカの気球が去年から十数回、中国の領空に侵入している。アメリカこそが最大のスパイ国家だ』と逆ギレ。これにアメリカは『そんな事実はない』と全否定しており、この気球をめぐる騒動は長引くかもしれません」
実は近年、日本の上空でも白くて丸い飛行物体が繰り返し、上空を浮遊している。
「19年に鹿児島県、20年に宮城県、昨年は沖縄県で目撃されています。鹿児島県ではアンテナのようなものがついていて、宮城県は2つのプロペラがあるなど違いはありますが、白い球体というのは同じ。ただ、撃墜したわけではないので中国製かどうかなど、詳しいことは何もわかっていません」(社会部記者)
2月7日の会見で浜田靖一防衛相は、もし外国の気球が許可なく日本領空内に侵入した場合は「領空侵犯になる」として、撃墜するか否かについて「必要なことであれば実施する」と話しているが、はたして有言実行となるのか。
「いや、実際に撃墜するのは難しいでしょう。自衛隊を巡る法制度が、アメリカとは明らかに違いますから」
こう言って苦笑するのは、軍事ジャーナリストだ。
「簡単に言うと、武器を使用できるのは正当防衛の場合のみ。自衛隊法では弾道ミサイルなどに対しては、上空での破壊を防衛大臣が命じることはできますが、航空機には該当しません。国際法でも、民間の航空機に対する武器の使用は原則禁止です。もし最初から『軍事用の気球』とわかっていれば、細菌をバラまかれたりする危険性があるとして正当防衛も成り立ちますが、無人で、しかも空中を漂っているだけなら、ただ見守るしかないのが現状です」
なんとも腰がひけた対応をせざるをえないのだが、
「そもそも正体不明のドローンが上空を飛んでいたとしても、まずはそのドローンに向かって、領空から出るように警告を発することになるでしょう」(軍事関係者)
ドローンに向かって呼びかけ…どうにもマヌケな光景だが、無人気球も同様。「どっか行ってくれー!」と叫んでいるだけで、はたして国民の生命と財産を守ることができると、政治家たちは考えているのだろうか。