11年ぶりに開幕投手を務める楽天・田中将大に対し、チーム内からも疑問の声が持ち上がっている。スポーツ紙遊軍記者は、次のように解説する。
「楽天にとってマー君は、生きるレジェンドですからね。表立って批判する人間はいないですが、あまりにも決定が早い。石井一久監督の過剰な忖度ぶりに首をかしげる人間は多いですね」
ヤンキースから楽天に復帰した2年間で、わずか13勝。打線の援護に恵まれなかった部分もあるが、球界最高の年俸9億円(今季は5億円)投手にしては、寂しすぎる数字だ。事実、評論家やOBたちからも「9億円は高すぎる。さすがにその価値はない」と批判めいた声も漏れていた。
だが楽天には、田中の機嫌を取らなくてはいけない事情がある。あと10勝で日米通算200勝の大台に到達するため、勝ち星を重ねていくことで、地元・仙台では大フィーバーが見込まれる。利にさとい楽天としては、田中には気持ちよく投げてもらい、商売にしたい思惑があるのだ。
その材料のひとつが、楽天では過去一度しか経験のない、名誉ある開幕投手確約だ。
「田中はWBCに出場できると思っていた。ところが、メンバーから漏れた。相当なショックだったようです。元々、気迫で投げるタイプ。駒大苫小牧出身の田中にとって、(開幕の日本ハム戦が行われる)札幌は第二の故郷。新球場での開幕投手となれば、ショックは振り払えますからね」(スポーツ紙デスク)
春季キャンプではグラブの位置や左足の上げ方などを試行錯誤しながら、新投球フォームに挑戦している。だが、いくら実績のある投手でも、フォームをいじることで本来の投球を失うリスクはある。田中自身は開幕投手について、
「すごく光栄なこと。12球団、12人しか経験することができないので。投手として特別なところだと思います」
と話すが、チームには岸、則本など実績と実力を兼ね備えた投手もいる。石井監督の田中に対する忖度が失敗して、本人もチームも低迷すれば、危険な火種になりかねない。
(阿部勝彦)