阪神と同じ関西に本拠地を持つオリックスが好調です。開幕前の下馬評は決して高くなかったのですが、大本命のソフトバンクと激しい首位マッチレースを繰り広げています。エース・金子と西の先発2枚看板や、糸井とペーニャを擁する打線も強力ですが、快進撃の最大の原動力は次にあげる3枚の救援投手です。
平野佳寿(30)=34試合1勝1敗3H25S、防御率2.83
佐藤達也(27)=38試合1勝3敗24H1S、防御率1.55
馬原孝浩(32)=34試合1勝3敗20H0S、防御率3.03
(成績は75試合消化時点のもの)
7回が馬原、8回が佐藤達、9回は平野佳という盤石の勝利の方程式は、自軍にも相手にも戦いぶりに大きな影響を与えています。先発投手は6回まで全力で投げれば、あとは何とかしてくれるという安心感があります。野手にとっても「先制点を取れば高い確率で勝てる」とモチベーションのアップにつながるのです。
グリーン周りからが上手なゴルファーが、ドライバーやセカンドショットを力まずに打てるように、チーム全体の野球のリズムがよくなっているのです。逆に相手にとっては「6回までに勝ち越さなければいけない」というプレッシャーがかかります。
3人の役割分担を明確にしているベンチの配慮も見逃せません。投げる順番が決まっていることで、ゲーム展開を読みながらブルペンで準備しやすくなります。準備に間違いのないほうが、結果に間違いはないのです。相手の打者によって、その日の調子によって順番が変わるようになればリズムが崩れますし、ベンチと3人の信頼関係も崩れてしまうのです。
近年の優勝チームを振り返っても、強力なクローザーとセットアッパーを持っていることは、優勝条件の一つになっています。
昨季の日本一の楽天には田中将大というスーパーエースがいたから例外としても、セ・リーグで連覇を達成した巨人はマシソン、山口、西村という3枚がフル回転しました。10年、11年とセ・リーグ連覇の中日も浅尾、岩瀬を擁していました。阪神も05年の優勝時にはJ・F・K(ジェフ・ウィリアムス、藤川、久保田)が君臨していました。
85年の阪神日本一も、一般的には打線の力で勝ったと思われていますが、実はリリーフ投手の充実が大きかったのです。中西清起、山本和行のWストッパーが機能しましたが、私は福間納という左のリリーフ投手を陰のMVPとして見ています。84年にはシーズン77試合登板という当時のセ・リーグ記録を作り、翌年にも疲れを見せず、中継ぎだけでなく先発としても4試合に登板し、計58試合で投げたのです。勝っていても負けていても、中盤からの3イニングぐらいを平気で投げてしまう姿を、我々野手陣も頭が下がる思いで見ていました。
阪神Vのための「後継者」育成哲学を書いた掛布DCの著書「『新・ミスタータイガース』の作り方」(徳間書店・1300円+税)が絶賛発売中。