放送法の「政治的公平」に関する総務省の行政文書をめぐり、高市早苗経済安全保障担当相が「捏造」との主張を繰り返していることについて、政府・与党内から発言の撤回・謝罪を求める声が出ている。高市氏が拒否すれば「罷免」の可能性も取りざたされているのだ。問題を提起した立憲民主党が、高市氏に対して「捏造」発言の撤回と謝罪を求めているためである。
高市氏と親しいジャーナリストの有本香氏は自身のツイートに、次のように書き込んだ。
「岸田総理から直接ではなく、側近(木原氏ではない)から高市大臣に『謝罪・撤回しないと予算審議を止めると立憲が言っている(お願い…)』と連絡があったことは事実です。これを高市さんは『撤回も謝罪もしない』と突っぱねた。ここで『罷免云々』という話が昨日広がりました。総理の真意とは別に」
ここでの「側近」とは木原誠二官房副長官ではなく、松野博一官房長官と磯崎久彦官房副長官を指す。
この磯崎氏は、文書の中で「俺の顔をつぶすようなことになれば、たたじゃ済まないぞ。首が飛ぶぞ」と総務省幹部を脅かした礒崎陽輔・元首相補佐官ではない。参院担当の官房副長官として、参院自民党との連絡役を務める人物だ。
参院自民党を仕切るのは、世耕弘成参院幹事長。高市氏と世耕氏は奈良県内の同じ小学校に通ったことがあり、安倍晋三元首相に近かったものの、「ポスト岸田」を目指すライバルでもある。世耕氏としては自身の力を示すためにも、自然成立の前に来年度予算成立を図りたい。高市氏の頑なな態度は、そのための「障害」とみているようだ。
ただ、高市氏はいったん国会審議で「捏造」と断じ、議員辞職も辞さない構えを示しただけに、簡単に「撤回・謝罪」に応じるわけにいかない。文書は「ありもしないことをあったかのように作られている」との主張を繰り返してきたのだ。
しかも、4月9日投開票の奈良県知事選では県連会長として、自身の総務相秘書官だった人物を担ぎ出していることもあり、高市氏としては選挙戦に悪影響を及ぼすようなことはしたくない。
岸田文雄首相がインドを訪問している間に、高市氏と世耕氏の「暗闘」が展開されそうだ。