大阪府吹田市の交番で警察官を包丁で襲い、拳銃を奪った罪に問われた男に対し、大阪高裁は一審判決を破棄して、無罪を言い渡した。飯森裕次郎被告は2019年6月、吹田市の千里山交番で警察官を出刃包丁で何度も刺して拳銃を奪った、強盗殺人未遂などの罪に問われていた。
争点は統合失調症の男の責任能力の有無で、検察は「病気の影響はあったものの、犯行時の責任能力は残っていた」と主張。一方、弁護側は刑事責任能力を問えない心神喪失だったなどとして、無罪を主張していた。
2021年の1審で大阪地裁は「責任能力はあった」と判断し、懲役12年の判決を言い渡し、弁護側が控訴していた。一審判決によると、飯森被告は19年6月、府警吹田署の千里山交番に虚偽の通報をし、交番から現場に向かおうとした警察官の胸や腕を出刃包丁で複数回、突き刺して殺害しようとしたほか、実弾5発入りの拳銃を強奪。
一審判決は、飯森被告が虚偽の通報をし、警察官の人数が減ったところを襲うなど「合理的な行動を取っていた」として、限定的な責任能力があると判断した。一方、弁護側は責任能力があるとした一審の認定は誤りで、量刑も重すぎて不当だとして、控訴していた。
弁護側は控訴審で、別の精神科医の意見書などをもとに、1審の被告人の鑑定書は「誤診だ」と主張。その結果、3月20日の判決で、大阪高裁は1審判決を破棄し、飯森被告に無罪を言い渡したのである。
「まさかの判決でした。昨今の流れから心神耗弱は認められると思っていましたが、責任能力なしの判断が下るとは思いませんでした。この判決は、世間からバッシングを受けることになるでしょう」(司法担当記者)
かつて19歳の実の娘に性的暴行を加えた実父に無罪判決を出した名古屋地裁岡崎支部の判事はその後、週刊誌などに「無罪というバカ判事」とまで批判された。
「今回の被告は交番に虚偽の通報をして、交番から向かおうとした警官を狙った、計画的な犯行です。それなのに責任能力がないという判決を、どうして出せたのか。名古屋地裁の判決もおかしかったけれど、今回も疑問を持つ方は多いでしょう」(前出・司法担当記者)
この件は最高裁までいくのだろうが、こんな頓珍漢な判決を下す判事が続出する日本の法曹界は、大丈夫なのだろうか。