日本の有力馬による海外競馬への大量参戦は、フェブラリーステークスや大阪杯などの春の国内G1のみならず、秋の国内芝G1戦線にも暗い影を落とし始めている。
事実、10月の第1日曜日にフランスのパリロンシャン競馬場で開催される「凱旋門賞」(芝2400メートル)には、JRA(日本中央競馬会)所属のスターホースが毎年のように参戦している。ちなみに、同レースへの参戦には数千万円規模の渡航費用が必要で、賞金総額も500万ユーロ(約6億円)と高額ではないが、ヨーロッパの最高峰レース、否、世界の最高峰レースの栄冠を手にすべく、日本馬の参戦が相次いでいるのだ。
また、毎年12月上旬に香港のシャティン(沙田)競馬場で開催される「香港国際競走」にも、JRA所属の名だたる有力馬が数多く参戦している。しかも、香港国際競走への渡航費用が主催者持ちとなっているのに加え、香港スプリント(芝1200メートル)を除き、今年から各レースの賞金総額が相次いで引き上げられたのだ。
具体的には、メインの香港カップ(芝2000メートル)が3000万香港ドルから3400万香港ドル(約5億5700万円)に、香港マイル(芝1600メートル)が2600万香港ドルから3000万香港ドル(約4億9100万円)、香港ヴァーズ(芝2400メートル)が2000万香港ドルから2200万香港ドル(約3億6000万円)へと、大幅に増額されたのである。
その結果、秋華賞(京都・芝2000メートル)⇒菊花賞(京都・芝3000メートル)⇒天皇賞秋(東京・芝2000メートル)⇒エリザベス女王杯(京都・芝2200メートル)⇒マイルチャンピオンシップ(京都・芝1600メートル)⇒ジャパンカップ(東京・芝2400メートル)⇒有馬記念(中山・芝2500メートル)と続く、3歳馬と古馬による今秋の国内芝G1戦線では、牡馬であるか牝馬であるかを問わず、例年以上の空洞化が懸念されているのだ。
JRA関係者も次のように不安を口にする。
「日本馬陣営にとって凱旋門賞は、損得勘定の埒外にある念願、悲願という側面があるが、今年から賞金総額が大幅に引き上げられた香港国際競走は、さらなる脅威になるでしょう。日本馬が香港国際競争に参戦した場合、日程上、12月24日の有馬記念への出走は不可能となります。近年、ジリ貧傾向が著しい暮れのグランプリレースへのテコ入れ策として、JRAが今年から1着賞金を4億円から5億円に引き上げたカンフル措置も、場合によっては全くの空振りに終わってしまうかもしれません」
レース日程の大胆な再編成も含めた、JRAの英断が求められるのだ。