現代人は加齢に伴い、大半の高齢者が高血圧の症状を抱えている。年齢を重ねることで血管の弾力性が失われ、血流が悪くなることで血管内の圧力が高まってしまうためだ。しかしその一方で、「低血圧」に悩まされている高齢者も多く存在する。
世界保健機関(WHO)の定めた基準では、「収縮期圧力100mmHg、拡張期圧力60mmHg以下」が低血圧とされている。低血圧になると、立ちくらみやめまい、動機、息切れ、倦怠感、頭痛、食欲不振、腹痛、午前中の不調といった症状が現れる。
低血圧といっても様々なタイプが存在するが、高齢者に多いのが「起立性低血圧」「食事性低血圧」、そして「薬剤性低血圧」だ。これは、何らかの理由で、一時的に血圧が下がるタイプで高齢者の3人に1人に、これらの症状が認められると言われている。
まず「起立性低血圧」は、座った状態や寝た状態から立ち上がった時に、めまいが生じる特徴がある。自律神経がうまく機能せずに、心臓が十分な血液を送り出せなくなることが原因となる。そのため、自律神経の機能が低下しがちな高齢者は、リスクが高くなってしまうのだ。ベッドから起き上がる際や、風呂から上がる時には、急いで立ち上がらず、足を動かすなどして血液を体に巡らせるようにして、ゆっくりと立ち上がるようにしよう。
「食事性低血圧」は、食後30分から1時間後ぐらいに血圧が下がるのが特徴だ。摂取した食事を消化吸収するために、胃や腸などに血液が集中するため、脳への血流が不足することが原因だ。「薬剤性低血圧」は、服用している薬が原因となり、低血圧に陥ってしまう。
高血圧に比べて軽視されがちな低血圧だが、転倒や失神による事故の危険もある。気になる症状があれば内科の受診が必要だ。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。