日本プロ野球、メジャーリーグともに通常シーズン真っ只中だが、自戒を込めつつメディア報道では、いまだ3月の侍ジャパン世界一の余韻を引きずっている感が否めない。
日本代表の快進撃を振り返った時、MVPを獲得した大谷翔平とともに、最年長のダルビッシュ有が献身的にチームをまとめたことが大きかったと、誰もが感じたことであろう。
「かつての大会では、イチローが率先してチームを鼓舞しました。しかしグラウンドを離れればホテルを別に用意するなど、そこには『超えられない壁』があるようでした。ところが今や6年総額で142億円超えと言われる契約を結ぶスーパースターのダルビッシュは、チームメイトと寝食を共にし、若い選手をフォローし続けたのです」(スポーツ紙デスク)
メジャー選手としては先乗りした形の宮崎強化合宿時から自腹で食事会を開き、急造チームの親睦を深めることに尽力した。
「山川穂高が『ダルさんが凄いのは、みんなに話をパスして、仲間外れを作らないところ』と感激していました。特に自身と境遇が被る、ハーフの宇田川優希が馴染むように働きかけていたのが印象的でした」(前出・スポーツ紙デスク)
若かりし頃はヤンチャなイメージばかりが先行していたが、時と立場が人間的な成長を促したのか。球界OBが言う。
「日本ハム時代から中田翔と生活を共にして人間教育を行うなど、若手の面倒見がいい部分はありました。その側面が、聖子夫人と結婚してから加速したようです。本人も『人間的に自分は変わった』と口にしていました」
こうしたダルビッシュの後進育成に対する姿勢には、あの知将と重ねる声も出た。
「かつて代理人が団野村氏だった影響なのか『ノムラの教え』に最もインスパイアされた選手だと感じます。『人間的成長がなければ、技術的成長はない』を体現している。自分から下に降りて相談に乗る姿は、先人以上かもしれません。球界には『名選手、名監督にあらず』という言葉がありますが、その例外である野村克也監督同様、ダルビッシュはいい指導者になりそうです」(前出・球界OB)
空前のWBCフィーバーには、まだまだ続きがありそうだ。