厚生労働省は「サル痘(エムポックス)」の国内感染者数が累計106人に達したと、明らかにした。とりわけ今年に入ってからの感染者の急増は凄まじく、年明けから4月12日までに確認された感染者数は、累計感染者数の9割超を占める98人に達している。
サル痘は天然痘に似た症状が出るウイルス感染症で、多くの場合、6~13日の潜伏期間を経て、発疹や発熱などが現れる。WHO(世界保健機関)によれば、欧米ではすでに8万6000人超の感染者と116人の死亡が確認されているという。
厚労省は「日本国内でも感染が拡大していると考えられる」とした上で、疑われる症状があれば医療機関に相談するよう、緊急の呼びかけを行っている。
それにしても、今年に入ってサル痘の国内感染者が急増しているのはなぜなのか。サル痘に詳しいウイルス学の専門家は、
「政府が外国人に対する入国規制を緩和したことが、最大の原因ではないか」
と指摘した上で、次のように明かしている。
「昨年7月、政府が新型コロナ対策として実施していた水際対策を緩めた結果、昨年の秋頃からインバウンド(訪日外国人客)が急速に増え始めました。実は日本国内におけるサル痘の感染者数も、昨年11月頃からジワジワと増え始め、今年に入って劇的に急増している。つまり、インバウンドの増加と感染者の増加は、ピッタリ一致しているのです」
サル痘は男性同士の性的交渉で感染するケースが多いとされ、今年に入って確認された国内感染者も全員が男性だ。だがサル痘は、男性に特有の感染症ではない。先のウイルス学専門家も、次のように警鐘を鳴らしている。
「サル痘は感染者の発疹部位や体液などに接触することでうつります。したがって、男性と同じように、女性も感染します。感染者が使用した寝具などへの接触でもうつりますから、インバウンドが急増する中、ホテルや旅館などで働く人たちは、特に注意が必要なのです」
コロナが終息しつつあると思ったら、次はサル痘の波。ウイルスへの警戒は、まだ怠ってはならないのである。