芸能

お茶汲みのアルバイト女子だと思っていたら、まさかの超絶アイドルが!「おお、桃ちゃん」と呼ばれて…

 80年代の半ば近くまで、私は欧州で暮らしていた。インターネットが発達している今と異なり、日本のニュースは週遅れで日本から届く新聞で読むぐらい。2週間に1回ほど、大使館に行って新聞を読むのが楽しみだった。あるいは、日本からの旅行者が持ってきた週刊誌や月刊誌を何度も読み返した記憶が残っている。

 日本食のレストランなどほとんどなく、日本人が経営している寿司屋は、欧州では西ドイツに1軒のみ。ロンドンには数軒の日本食堂があり、カツ丼を出しているとは聞いていたが、行ったことはなかった。ただ、醤油だけは大きなスーパーにキッコーマンが売られているのを見て、感動したことを覚えている。パリやデュッセルドルフなどの大きな都市には日本の食材を販売する専門店はあったが、主にインスタントラーメンや蕎麦、うどん、出汁つゆのようなものだった。

 新聞を読まなければ、日本のことは分からない。が、それを気にしなくなると、逆に日本に興味がなくなる生活を送ることになる。私はなんとか日本の動静についていくよう心がけ、帰国してからもスムーズに社会に溶け込むのだと言い聞かせていた。新聞には週刊誌の広告もあり、それで世の中の流れを探っていた。

 しかし、テレビドラマや歌番組は全く見る機会すらない。唯一、大晦日の紅白歌合戦は一カ月ほど遅れて、大使館が借りたレストランなどで鑑賞会が開かれた。

 日本に帰国してしばらくの間は、浦島太郎状態だった。当時の日本人の誰もが知っているはずの中国残留孤児問題も、あんな熱量だとは知らなかったし、巨人・王貞治選手のホームラン記録も騒ぎを経験していないため、話を合わせるのが難しかった。

 日本に戻ってから、都内でアナウンサーをしている先輩と食事を共にするため、夜になって放送局に行った時のことだ。フロアはガランとしていて、誰もいなかった。あれはおそらく、日曜日か祝日だったのだろう。

「何をお飲みになりますか」

 すると、どこかの部屋から来た若い女の子が声をかけてきた。

「あ、気にしないで下さい」

 一応、断ったのだが、

「コーヒーでよろしいですか」

 そう言ってしばらくすると、プラスチックカップに入ったコーヒーを運んできてくれた。

「どうぞ」

 おそらくお茶汲みか何かのアルバイトなのだろうが、随分と気が付く女の子だなと、私は感心した。

「なんだ、コーヒーを飲んでいるのか」

 収録が終わった先輩が、やっとフロアに姿を見せた。

「さてと、どこに行こうか」

 その時、フロアを歩いていたさきほどのお茶汲みアルバイト女性の姿が見えた。

「先輩、あの娘がコーヒーを持ってきてくれたんです。よく気が付く娘ですよ」

 彼女のことを褒めた。すると、

「おお、桃ちゃん、来てたの」

 先輩は親しげに彼女に話しかけたのである。彼女も微笑みながら、お辞儀をしているではないか。

「コイツ、オレの後輩だけど、長い間ヨーロッパで過ごしていたから浦島太郎状態で、桃ちゃんのことを知らないんだ」

「桃ちゃんって?」

 私はポカンとしていた。お茶汲みだと思っていたのは、アイドルとして人気絶頂になり始めの菊池桃子だったのである。

(深山渓)

カテゴリー: 芸能   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    なぜここまで差がついた!? V6・井ノ原快彦がTOKIO・国分太一に下剋上!

    33788

    昨年末のスポーツニュース番組「すぽると!」(フジテレビ系)降板に続いて、朝の情報番組「いっぷく!」(TBS系)も打ち切り決定となったTOKIOの国分太一。今月30日からは同枠で「白熱ライブ ビビット」の総合司会を務めることになり、心機一転再…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<寒暖差アレルギー>花粉症との違いは?自律神経の乱れが原因

    332686

    風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水が出る‥‥それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー」かもしれない。これは約7度以上の気温差が刺激となって引き起こされるアレルギー症状。「アレルギー」の名は付くが、花粉やハウスダスト、食品など特定のアレルゲンが引…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<花粉症>効果が出るのは1~2週間後 早めにステロイド点鼻薬を!

    332096

    花粉の季節が近づいてきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は全国的に要注意レベルとなることが予測されている。「花粉症」は、花粉の飛散が本格的に始まる前に対策を打ち、症状の緩和に努めることがポイントだ。というのも、薬の効果が出始めるまでには一定…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
上原浩治の言う通りだった!「佐々木朗希メジャーではダメ」な大荒れ投球と降板後の態度
2
【高校野球】全国制覇直後に解任された習志野高校監督の「口の悪さ」/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」
3
エスコンフィールドに「駐車場確保が無理すぎる」新たな問題発覚!試合以外のイベントでも恨み節
4
「子供じゃないんだから」佐々木朗希が米マスコミに叩かれ始めた「温室育ち」のツケ
5
これも「ラヴィット!」効果…TBS田村真子アナ「中日×巨人で始球式」に続く「次に登板するアナウンサー」