遊説中の岸田文雄総理を手製のパイプ爆弾で襲撃した、木村隆二容疑者。本人は警察の取り調べに一貫して黙秘を続け、弁護士との接見の内容も明らかにされていない。だがここにきて、闇に包まれていたその「犯行動機」が、徐々に明らかになってきた。
木村容疑者は昨年6月、自身が参院選に立候補できなかったのは憲法違反にあたるなどとして、神戸地裁に国家賠償請求訴訟を起こしていた。その後、訴えが退けられると、これを不服として大阪高裁に控訴、今年5月に判決が言い渡される予定になっていた。
だが、これらの事実をもって「犯行動機は選挙制度への不満」と断じるのは早計だ。というのも、木村容疑者は神戸地裁に提出した書面で「岸田内閣は安倍元総理の国葬を世論の反対多数の中で議会での審理を経ずに閣議決定のみで強行した」などと批判していたほか、大阪高裁に提出した書面でも次のような主張を展開していたからだ。
「政治家は国民の信任ではなく、統一教会の組織票で当選、利益利得を不当に独占することができ、国民に損害を与え続けている」
「統一教会などの組織票を持つ、癒着する政党が有利になる」
結局、行き着くところは「安倍晋三と統一教会」。犯罪心理学の専門家も、
「木村容疑者が、安倍元総理と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)、そして安倍元総理の国葬を強行した岸田総理に、ただならぬ不満や怒りを抱いていたことは間違いありません。代理人弁護士を立てない本人訴訟として提訴した国家賠償請求訴訟も、心の奥深くに溜め込んでいた、それらの不満や怒りを公にするための手段にすぎなかったのではないか」
木村容疑者はローン・オフェンダー(単独の攻撃者)として犯行に及んでおり、この点は安倍元総理を手製銃で銃撃、殺害した山上徹也被告も同じだ。事件後、山上被告に対しては、すでに1万3000筆を超える減刑署名が寄せられており、
「木村容疑者が『自分も山上のようになりたい』と考え、今回の犯行に及んだ可能性も大いにあります」(前出・犯罪心理学の専門家)
安倍元総理と旧統一教会を巡る問題は、今も水面下で燻り続けているのだ。