ダンスボーカルユニットEXILEのボーカル担当ATSUSHIが、4月末から始まる全国ツアーの中止と現在の体調について言及した。どうにも言葉が出にくいというのだ。この1カ月、芸能活動を休止していたというATSUSHIはインスタグラムで、
「実は3月中旬頃、仕事関係の方と食事をした際に体調が悪くなり、検査入院を行った結果、一酸化炭素中毒の疑いからくる体調不良という診断を受けました。最初の1カ月半はめまいと吐き気、頭痛がひどく、起き上がることが辛く、普通の生活をすることも少し大変な状態になってしまい、痛み止めの薬を飲みながら安静にしている状態でした」
ところが症状はなかなか改善しない。ATSUSHIは続けて、
「約2か月経った今も、たまに言葉が少し出てきにくい時があり、トンネルの中や飛行機に乗った時に感じる耳に圧がかかっているような状態がずっと続いていて、ある一定の高い周波数が脳に響きそこからまた頭痛を引き起こしてしまうような状態です。そのため、大きな音で音楽などを聴いたり、長時間歌唱することなども難しく、ライブや歌唱などの仕事を制限しないといけなくなりました」
自身が書き下ろした応援ソングを歌うはずだった、G7広島サミット関連ライブ休演の経緯を、そう説明したのだ。
一酸化炭素中毒は冬場、換気せず暖房器具を長時間使った際などに起きるが、高濃度の一酸化炭素を吸い込んでしまうと数分で死ぬことも。軽症でもATSUSHIのように、頭痛などの後遺症に苦しむことがある。
人間の血液、赤血球の中に含まれるヘモグロビンは通常、酸素と結合して全身に酸素を送っているが、一酸化炭素とヘモグロビンの結合力は酸素の250倍から300倍もある。そのため、手足の痺れや頭痛、吐き気で一酸化炭素中毒を自覚する頃には手遅れに。必死で呼吸をすればするほど、その場の一酸化炭素をどんどん吸い込んでしまい、脳へのダメージが進んでいく。一酸化炭素中毒かと思ったら、一酸化炭素が充満する部屋から1秒でも早く逃げ出さねばならない。
屋外のバーベキューで一酸化炭素中毒になる心配はないが、芸能人は人目に付かないよう、個室で会食する機会が多い。焼肉や鍋、炭火焼きなど直火を使った料理で、一酸化炭素中毒に巻き込まれるリスクは高いだろう。
主な治療法は高気圧酸素療法で、命の危機から脱した後も1日1回の治療を続けることで、脳の機能を改善させていく。3カ月から半年で社会復帰できた人もいるそうだが、ATSUSHIはどうか焦らず、リハビリに専念してほしい。
(那須優子/医療ジャーナリスト)