ベンチ内で香を焚くなどの奇行で有名な阪神の助っ人が、ルパート・ジョーンズだ。
ジョーンズは本来、阪神のユニホームを着ることはなかったかもしれない。1988年、球団とのトラブルで、最強の外国人と呼ばれたランディ・バースがシーズン中に帰国。その穴埋めとして球団が走り回り、どうにか入団にこぎつけたのがジョーンズだった。
MLB在籍12年間で6球団を渡り歩き、通算147本塁打。球宴には2度出場し、マリナーズが新規参入した際の拡張ドラフトでは、ロイヤルズから1位指名されたほどの有望株だ。ポスト・バースとしての期待は大きかった。
だが、実は左肩を故障したままで来日。まともにボールが投げられず、外野手としての返球はなんと、下手投げ。一塁手としても二塁手まで届かず、他チームからは「ジョーンズの遠投は1メートル」と小バカにされたほどだった。
チームメートもジョーンズの肩に気を使い、アウトを取った後のボール回しでは、投手が一塁手ジョーンズのところまで受け取りにいくシーンも。虎党で埋め尽くされたライト側スタンドからは、嘲笑のヤジが飛び交ったこともある。
ジョーンズを有名にしたのは、その外見だった。頭を剃り上げたスキンヘッドに加え、日本球界で初めて「背番号00」をつけた。「ゼロゼロ怪人」というニックネームは傑作だ。
だが、かわいそうな部分もあった。アメリカではMLBとマイナーリーグを合わせて5試合しか守っていない、一塁手として起用されるケースが多く、失策を連発した。シーズン終盤には左肩が回復に向かったが、結局52試合に出場して打率2割5分4厘、8本塁打、27打点の成績に終わり、この年を最後に現役を引退している。
(阿部勝彦)