ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者にして総帥のプリゴジン氏が、ウクライナ東部の激戦地バフムトから政権批判の咆哮をブチ上げた。
「オマエら(国防当局者ら)は高級クラブに座り、オマエらの子供はYouTubeを楽しんでいる。弾薬の割り当て分を渡せば、死者は5分の1になるはずだ。オマエらが豪華なマホガニーのオフィスでぶくぶく太っていくために志願兵は死んでいくのだ!」
数十人に上る志願兵らの遺体の映像とともに、テレグラムでこうブチ上げたプリゴジン氏は、さらにショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長ら、プーチン大統領の側近らを呼び捨てにする形で、次のように吐き捨ててみせたのである。
「ショイグ!ゲラシモフ!弾薬はどこだ!」
プリゴジン氏はプーチン大統領と同じサンクトペテルブルクの出身で、1990年代から高級レストランをはじめとする飲食店の経営に乗り出し、大統領と各国首脳の会談の際の会食も担当。「プーチンの料理人」と呼ばれてきた人物だ。
プーチンの側近中の側近でもあるそのプリゴジン氏が、露骨な政権批判を猛然と開始したのはなぜなのか。プーチン政権の内情に詳しい国際政治アナリストは、
「プリゴジンは、異常なまでの野心家として知られています。ズバリ、『次期大統領』の座を狙って動き出したとみて、間違いありません」
とはいえ、プーチンの寝首を掻くことまでは考えていないのだといい、
「まずはショイグやゲラシモフらの作戦失敗を槍玉に上げて追い落とし、政権内での自らの地位を不動のものにする。その上で、プーチンが院政を敷くことのできる花道を用意して、自分が大統領の座に就く。プリゴジンが今、秘かに画策しているのは、こんなところでしょう」(前出・国際政治アナリスト)
要するに、ショイグやゲラシモフらをスケープゴートに仕立て、新たな指導体制のもとで自らが実権を握るという野望だ。まさに泥沼の権力闘争と言うほかはない。