中国でスパイ行為を取り締まる「反スパイ法」が4月に改正され、7月から施行される。
「反スパイ法」においては、最近ではアステラス製薬の幹部が現地で拘束されるなど、特に日本人が多い。この法改正では、日本人がターゲットになる「日本人狩り」が一段と進む懸念が強くなっている。霞が関関係者が言う。
「2014年に反スパイ法が施行されて以降、国家機密漏洩に関連した人物は取り締まりの対象となり、日本人は少なくとも17人が摘発を受けています。しかし、その中身は恣意的とされ、中国側に都合のいい解釈が横行していると批判されてきました。今回の改正では『国家の安全と利益に関わる文書やデータ、それに資料や物品』を盗む行為が加わったといいますが、これにより曖昧さがさらに拡大され、何でもかんでも摘発理由にされる可能性は高い」
日本の公安関係者は、中国が反スパイ法をエスカレートさせる理由を、次のように明かす。
「背景には習近平体制の異例の3期目への批判や、ゼロコロナ政策大失敗に対する不満のガス抜きがある。要は敵を海外に作る、中国お得意のヤリ口です。その点、いまだ第二次世界大戦をめぐって日本に恨みを持つ中国人が多い中、スパイ容疑での摘発はうってつけ。日本人は徹底的にマークされるでしょう」
今後は日本企業が中国進出に及び腰になることが予測されるが、
「政治家や学者、企業幹部らも、渡航時に拘束されるリスクが増える。そうした人たちと交わる、中国の良識ある文化人、留学生も同様だ」(政府関係者)
在中国日本大使館員などと接触していた共産党系の中国紙「光明日報」の論説部副主任・董郁玉氏は3月、スパイ罪で中国検察当局に起訴されている。
岸田政権は中国の不当拘束に対し、これまで以上に断固反対の強い姿勢をとるべきだ。
(田村建光)