中国空軍に所属する若手パイロットらの成長や奮闘を描いた中国映画「長空之王」(「大空の王」の意)が、今年4月末の公開からわずか1週間で、中国国内での興行収入が5億元(約100億円)を突破するという、異常な人気ぶりを示している。
主人公に抜擢されたのは、人気俳優の王一博。主人公は過酷な訓練の末に、新型ステルス戦闘機のテスト飛行を命じられるまでに成長する。中でも観客が拍手喝采を送るのは、米軍機とおぼしき戦闘機を主人公が追い詰める、ドッグファイトシーンだという。
この映画が米軍の若手パイロットらの成長や奮闘を描いた、トム・クルーズ主演のハリウッド映画「トップガン」をマネて製作されたことは言うまでもない。事実、欧米メディアは早速、「中国版トップガン」としてこの映画を紹介している。
そんな中、「ちょっと待った。この話、少しおかしくないか」という声が、中国国外から上がっている。習近平政権の内情に詳しい国際政治学者は、
「映画に限らず、海外の商品やサービスを素知らぬ顔でパクるのは、中国のお家芸。しかも中国は今、アメリカを最大の仮想敵国とみなしているのです。にもかかわらず、いわば敵性映画にあたる『中国版トップガン』で愛国主義を煽り、強軍路線を正当化しようというのは、思考や感覚が分裂しているとしか思えません。さらに言えば、この映画の製作には中国軍が全面的に協力しており、まさに習近平国家主席が主導した国策映画にほかならないのです」
独裁体制を維持するためなら、パクリだろうが敵性映画だろうが、何でもありの習近平。それに踊らされる人民も含めて、まさに「笑止千万」の極みである。