芸能

テリー伊藤対談「林家たい平」(3)美大生から落語の道へ進んだのはなぜ?

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テリー たい平師匠は、武蔵野美術大学を卒業してるんだよね。どうして落語家になろうと思ったんですか。

たい平 美大に入ったきっかけは、僕は「3年B組金八先生」の世代なので、学校の先生になりたかったんです。でも、高校で勉強がだんだんできなくなって、担任の先生に「学校の先生になりたいけど、勉強はできないんです。どうしたらいいですか?」って相談したら、その先生は美術の先生で「美術の先生なら、技術面でカバーすればなれるぞ」って言ってくれて。

テリー とはいえ、武蔵美に入るのは難しいよ。

たい平 その先生がいろいろと指導してくださったおかげで入学することができたんですね。大学ではデザインを勉強したんですけど、最初の先生の言葉が「デザインは人を幸せにするためにある」って。

テリー その言葉も、飲み屋でお姉ちゃんに使ってるな。俺もメモっとこ!

たい平 エヘヘヘ(笑)。そこで、大学1年の時に落語研究会に入ったんです。

テリー あ、じゃあ、落語をやってみたいという気持ちはあったんだ。

たい平 いやいや、それが一切なかったんですよ。何のサークルに入ろうかなとうろうろしていたら「武蔵野美術大学落語研究会」っていうのれんがあった。「何で美術大学まで来て落語研究会なんだろう‥‥」と思ってのぞいたら、人のよさそうな先輩が廃部の相談をしていたんですよ。

テリー 新入生を呼ぶ季節なのに。

たい平 「去年も部員が入らないし、今年も入る予定がないし、最後に華々しく寄席をやって解散しようか」みたいな。そこで「僕が入ったらつぶれないんですか?」って言ったら、「気にしないで、気にしないで!」と言われて、あんまりいい人たちだったのと、お笑いはもともと好きだったので、入ったんです。

テリー そんな出会いだったんだ。そこから落語にハマったと。

たい平 それがそうでもないんですよね。結局、あまり落語に興味が出ないまま大学3年生になって。でもある時、夜中に授業の課題をやってたら、ラジオの音楽番組が終わって、落語が始まったんです。それにどんどん引き込まれていったんですね。

テリー わぁ、誰の落語だったの?

たい平 先代の小さん師匠です。「粗忽長屋(そこつながや)」という、星新一のショートショートみたいな、SFっぽいお話で。「ええっ、ラジオなのに、どうしてこんなにおもしろいんだろう」と思った。そこからなんですよね。

テリー そうだったんだ。

たい平 これまた、飲み屋で使えそうな言葉ですけど「人を幸せにするデザインのために僕がいちばん使えるのは、落語という絵の具じゃないのか?」と思ったんです。

テリー 出ました「落語という絵の具」‥‥それで女性にボディペインティングしてるんですよね(笑)。

たい平 裸にね。幸せの女体盛り(笑)。

テリー ハハハ。それで落語の魅力に気がついた、と。

たい平 4年生になる春に、落語を老人ホームでしゃべりながら、東北を15日間旅をしたんですね。それで帰ってきて「落語家になろう」と決意して。そして大学を卒業して、こん平の弟子になりました。それから6年半住み込みをしましたね。

テリー 6年半の修業期間、ってすごいよね。今も内弟子を取る落語家さんは多いんですか。

たい平 ほぼいないですね。きっちり住み込みをしたのは、海老名のおかみさん(初代林家三平の妻・海老名香葉子)も「たい平が最後じゃないかしら、落語界で」と言ってるぐらいで。こん平師匠の場合、弟子はみんな近くにアパートを借りて通っていたんです。だけど僕はお金がなかったので、師匠に相談した。「じゃあ大師匠のうちに住まわせてもらいなさい」と。そういう経緯で、こん平の弟子でありながら大師匠・三平のうちに住み込みが始まったんですね。

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