「虎の村神様」こと阪神タイガースの村上頌樹投手が5月9日のヤクルト戦で、開幕から「31イニング連続無失点」という、歴史的な記録を達成した。これは阪神の中井悦雄が保持していた球団記録とセ・リーグ記録に並ぶ快挙である。
しかし、試合は0-1で阪神の完封負け。この日のゲームでは、タイ記録を達成した村上が、厳しいプロの洗礼を浴びる一幕もあった。
タイ記録までアウトひとつにまで迫った6回表、村上は「本家村神様」こと、ヤクルトの4番・村上宗隆を、外角低めのストレートで三振に仕留めた。ところが、記録更新がかかった7回表、先頭打者の5番サンタナに甘く入ったストレートを左中間スタンドに運ばれ、新記録の夢は甲子園の夜空に消え去ったのである。
それでも村上は7回を投げ切って、失点は本塁打による1点のみ。今季の通算防御率は0.28と、リーグトップの座をガッチリとキープしたのである。
そんな中、将棋界から「村上頌樹はプロ野球界の藤井聡太だ」との声が上がっている。大のプロ野球ファンでもある元棋士が明かす。
「藤井さんは2016年に史上最年少でプロ入りを果たすや、29連勝という公式戦最多連勝の新記録を打ち立てました。その姿が村上選手に重なるのです。そう感じるのは私だけではありません。事実、若手はもとより、超ベテランも含め、野球ファンの棋士からは『村上さんは藤井さんのような天才』という、称賛の声が上がっていますから」
藤井は竜王、王位、叡王、棋王、王将、棋聖の6大タイトルを、すでに手中に収めている。そして今後、全てのタイトル防衛戦に勝利し、残る「名人」と「王座」のタイトルを手にすれば、前人未到の「八冠」誕生となる。
一方の村上もすでに、今季からセ・リーグで新設された「月間大賞」(3、4月度)に選ばれている。言うまでもなく、村上が次に目指すべきは、年間を通じて最も活躍した「完投型先発投手」に贈られる「沢村賞」だろう。
村上頌樹と藤井聡太。プロ野球界と将棋界に出現した天才の今後が、楽しみで仕方がない。