今季からレッドソックスに加入した吉田正尚(29)だが、そのフィーバーぶりは、押しも押されもせぬスーパースターの大谷に勝るとも劣らない勢いだという。
「代理人が『守銭奴』と悪名高いスコット・ボラス氏ということもあり、当初は5年総額約126億円の契約に見合うのか、訝しむムキもあったのですが、開幕早々に訪れた不調をあっという間に乗り越え、5月7日のフィリーズ戦まで16試合連続安打を記録するなど大爆発。今では辛口のニューヨークのメディアが『何でヤンキースが獲らなかったんだ?』と皮肉めいた記事を出したり、『不安な守備面に目をつぶったレッドソックスがハイリターンを得た』と絶賛されています」(在米スポーツライター)
レッドソックスの本拠地であるフェンウェイ・パークは、他球場と比べてレフトフェンスが極端に前に設置され、守備範囲が狭く遠投の必要性がない。
「球団はそれを見越して吉田獲得に踏み切ったと言われます。実際、ホームではレフト、アウェイはDHと使い分けられていますから。また、そのレフトの象徴である高さ約11メートルの巨大なフェンス『グリーンモンスター』を越えるホームランを放ったことで、吉田はパワーもあることを証明しました。これはチーム関係者や解説者らにとっても想定以上だったようです」(在米スポーツライター)
また吉田にとって、かつて松坂大輔(42)や上原浩治(48)が所属したレッドソックスは、球場のサイズ以上に適応しやすいチームだったようだ。
「まず球団フロントやトレーナーに、日本人スタッフがいるんです。その点で意思疎通やケアは万全。吉田本人も神経質なところはなく、やや天然気味の性格で、チームメイトや監督に溶け込むのも早かった。何よりメディアの記事や評価などを全然気にしないタイプで、不調の時期もマイペースで練習に取り組むことができたため、早い段階でメジャーの投手にアジャストできたそうです」(スポーツライター)
打撃好調の詳細を友成氏が解説する。
「開幕当初はメジャー特有の手元で沈むムービング・ファストボールに手を焼いてゴロを量産しましたが、スタンスをオープン気味に変えて最後までボールを見ることができるようになり、もともとのバットコントロールのよさも手伝って一気に打棒が開花。今では『空振りをしない打者としてはメジャーでも代表格』とさえ評されています」
連続試合安打が止まってからはやや成績にブレーキがかかったが、それでも吉田の好調とともにチームの調子も上がってきたことは確実で、今や名実ともにチームの顔となりつつある。そればかりか、
「昨季のレッドソックスは上位打線の調子が悪く、吉田は高い出塁率を期待されて獲得されました。そのうえアレックス・コーラ監督(47)は吉田をさらに高く評価し、その中でもチームの最強打者の証である『2番打者』にも起用。選球眼がよくて出塁率も高いので、打率と出塁率で2冠王を狙えるんじゃないでしょうか」(友成氏)
チームは昨季、ア・リーグ東地区で首位から21ゲーム離され最下位に沈んでおり、今季も開幕前は断トツの最下位候補と目されていた。しかし、
「防御率が軒並み5点以上の先発ローテ陣を、吉田を筆頭とした打撃陣の爆発でカバー、打ち勝つ野球というチームの戦術が固まった。同地区は強豪がひしめき、現在は最下位のヤンキースでさえ21勝18敗と貯金があります。首位のレイズは30勝9敗と独走中で、残り4球団がワイルドカード枠を狙うことになるはずです」(MLB記者)
うまくいけば大谷と吉田というWBC侍ジャパンの勝ち組2人がプレーオフで激突。そんなファン垂涎のクライマックスが待っているかもしれない。