大阪府の情報公開条例に基づく開示文書等により、2022年度に大阪府警が訓戒や注意、懲戒処分にした警察官、職員が合計200人いたことが、今年2月に大きく報じられた。
処分された事案の中には、留置施設で係官が居眠り中に面会者が撮影した動画が漏洩したケースや、「ちゃんと仕事をしているところを見せたかった」と、遺体写真を撮影して身内に送っていたことも。さらには、副業としてデリバリー性サービスの運転手として勤務していたり、こともあろうにパチンコ店で他人のICカードを盗んで逮捕された輩まで。元々、府民には不人気と言われる府警が、さらなる不信を買うことになってしまったのである。
かつて大阪府警の超杜撰な捜査で、芸能界から葬り去られそうになったタレントがいる。それが2002年6月14日、友人に対する傷害と恐喝容疑で大阪府警守口署に逮捕された、杉浦太陽だ。
杉浦は当時、「ウルトラマンコスモス」(TBS系)で主役のムサシ隊員を演じ、ちびっ子のみならず、ちびっこママたちにも大人気の存在だった。そんな俳優の逮捕容疑は2年前の2000年9月、弟の金を盗んだとして弟の知人(当時19歳)を殴り、3週間のケガを負わせた上、現金45万円を脅し取った、というものだった。
逮捕を受けて、毎日新聞大阪版が夕刊で「ウルトラマンコスモス 傷害容疑、出演者逮捕!」とブチ上げ、翌日の各スポーツ紙も、社会面と芸能面を割いて大々的に報道。これを受け、番組を制作する毎日放送は急遽「ウルトラマンコスモス」の放送打ち切りを決めた。夏休みに公開予定の映画も杉浦の出演場面をカットし、作業が進められることになった。
ところが取調べが続く中、被害者が提出した陳述書に虚偽があったことが発覚。なんと、暴行でケガを負わせたのは杉浦ではなく、「10人の不良グループ」であることが明らかになったのである。
逮捕から18日後の7月2日に処分保留で釈放され、7月8日に記者会見を開いた杉浦は、知人を殴ったことは認めた上で、
「グーでほっぺたを一発、殴っただけ。ケガは負わせていない。殴ったのは大人げないと思うが、人間として間違ったことはしていないと思います」
事件当日は「映画の撮影」というアリバイがあったにもかかわらず、
「逮捕前に任意の事情聴取は一度もなかった。朝起きたら6人の警察官に逮捕されて、状況が把握できないまま新幹線に乗せられた」
実に杜撰な捜査に怒りを爆発させたのである。とはいえ、警察がアリバイの「裏取り」もせずに逮捕することなど、ありうるのだろうか。
「おそらく、提出された診断書と被害者の供述を一方的に信じた結果だろうが、所轄署としても『有名人を逮捕できる』との高ぶりがあったのかもしれない。ただ、アリバイの確認は言うまでもなく、捜査のイロハのイ。杜撰な捜査だと非難されて当然のこと」(警察関係者)
すんでのところで危機を逃れ、芸能界に戻ってくることができた杉浦だった。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。