将棋界の歴史がまたひとつ、藤井聡太によって塗り替えられた。史上最年少での名人戴冠とともに、あの羽生善治に続いて2人目となる七冠の偉業が達成された。23年のタイトル戦19局の成績は14勝5敗。爆勝ロードを陰で支えた「勝負メシ」全30食を完全攻略。食事面から強さの秘密を解き明かす。
5月31日と6月1日の2日間、将棋ファンが固唾をのんでひとつの対局を見守っていた。それは藤井聡太竜王(20)が渡辺明名人(39)に挑んだ、名人戦第5局。藤井竜王が3勝1敗と名人位に王手をかけた大一番だったが、94手で渡辺名人が投了、新たに藤井七冠が誕生した。
将棋の対局は長丁場だ。名人戦のように2日かけて行われることもあり、棋士の体力はアスリート並みに激しく消耗し、対局後に体重が数キロ落ちることも珍しくない。また、頭脳労働には糖分をはじめ様々な栄養素が必要なのは、今や誰もが知るところである。
そこで、近年特に注目されてきたのがいわゆる「勝負メシ」だ。将棋ライターの松本博文氏が解説する。
「昔から昼休憩はもちろん、合間にチョコレートを食べたり、みかんを食べたりするのは、将棋界の慣習としてよくあることでした。対局中の栄養補給は、今ほど栄養学の知識がない時代から必須だったんです。その名残で、タイトル戦のような格式の高い対局では必ず、昼食のほかにも午前と午後の2回、おやつが用意されるようになりました。タイトル戦は全国各地のホテルなどで行われます。いつしかその地産の食材を使った料理や地元の銘菓が提供され始め、対局がネット中継されて以後は、大きな注目が集まるようになった。藤井七冠のデビュー後はさらにその傾向が強まり、今ではタイトル戦の勝負メシは、ある種、町おこし的な意味合いも含むほどです」
若き王者の食生活にあやかりたいファンも多いのだろう。藤井七冠が食した勝負メシは、その土地の名物メニューとなり、通販で扱おうものなら即完売することも珍しくない。
そして今回、アサ芸は今年に入ってから藤井七冠が戦った4タイトル戦19局の勝負メシに着目。2日制の「名人」「王将」、1日制の「棋王」「叡王」で食べた「全30食の昼食プラスおやつ」のメニューに、勝利へ導く法則性や特別効果があることを発見したのだ。料理研究所「おとな食堂」を主宰する健康料理家、川上晶也氏が言う。
「勝負メシの内容を見ると、対局時のエネルギー消費量がいかに激しいものかが、献立の糖質の高さから見て取れます。ただ、そのエネルギーを補うだけでなく、脳の活性化や集中力アップ、リラックス効果などを高める栄養素もキチンと摂るためのメニューになっているという印象です」
それでは、さらに詳しくその内容を見てみよう。