魔球を操る日本人メジャーリーガーがもう1人。メッツの千賀滉大(30)は十八番の“お化けフォーク”でエース格の働きを見せている。
「バーランダー(40)やシャーザー(38)ら、調子の悪い大物選手を凌駕する活躍ですよ。最速164キロのフォーシームと最大落差100センチ超のフォークをそれぞれ高低に投げ分けて、チームトップの73奪三振を記録。同様のスタイルで一定の成績を残した上原浩治よりもコントロールはアバウトですが、そのおかげで三振数を稼いでいる印象です。際どいコースよりも甘いコースに投げた方がフォークの場合は振ってもらえますからね」(友成氏)
メジャーではひとくくりに「スプリット」と表記されているが、千賀が投じるのは日本原産の「フォークボール」。メジャーでも類を見ない変化量の効果とは裏腹に、支払う代償も大きいようだ。
「スタミナの消耗が激しい。全球種の中で最も疲れるのがフォーシームで、2番目がフォーク系。その2球種が投球全体の約65%を占めているだけに、イニングを経るごとにボールの出力が落ちるのは当然でしょう。大谷がスプリットを多投しなくなったのも、体力を温存させて長いイニングを投げる狙いがあるといいます。元来が故障癖もある千賀だけに、登板間隔も短くなった今、このままシーズンを完走できるか怪しいものです」(友成氏)
事実、中4日で登板した6月5日のブルージェイズ戦では3回途中4失点でKO。全64球中34球のボールを見送られる“待球作戦”に崩れてしまった。
「フォークボーラーは球数が膨らんでしまうもの。それだけに、スタミナを消費させるのが容易なんです。基本的に真ん中より低めのフォークはボール球なのでツーツーのカウントでは見送ります。もちろん、フルカウントから投げてくるフォークはファウルで粘って握力を削る。1巡目では手の出なかったボールでも、2巡目、3巡目となるたびにボールの威力は半減していきます。そこからは、早いカウントで投げてきたフォーシームを狙い打つ。阪急時代、チーム全体であの野茂英雄にも使った作戦です」(松永氏)
とはいえ千賀は大谷のようにモデルチェンジができるタイプではなさそうだ。
「スライダーの精度があまり高くない。カウント球として全投球の約14%投げていますが、被打率は3割超えで4本もホームランを打たれている。打者の目線を変えるカーブの割合を増やさないと、丁半博打のような投球を繰り返すだけになってしまいます」(在米スポーツライター)
ある時は2桁奪三振、またある時は短いイニングでノックアウト。つけいるスキがあるのもまた、伸びしろがある証明とも言えようか。
いずれにせよ2人の“国産魔球”は、万全の状態であればメジャーの猛者たちでも容易に打ち崩せないのは紛れもない事実。残りのシーズンでも、バッタバッタとなで斬りする姿を見せてもらいたいものだが──。