パソコン周辺機器メーカーのバッファローやシー・エフ・デーを傘下に持つメルコホールディングス(HD)の株主総会で、「大塚家具」元社長の大塚久美子氏が社外取締役に選任された。父親の勝久氏が一代で築き上げた会社を実質的に潰してしまった久美子氏にはあまり良いイメージはないが、起用したメルコHDにはメリットがあるのだろうか。
経済誌ライターが説明する。
「久美子氏は2009年に大塚家具の社長に就任しましたが、勝久氏と経営方針を巡って対立し、『お家騒動』と連日メディアを賑わせました。15年には株主総会で父を追い出す形で久美子氏が社長に再任され、高級路線からカジュアル路線に舵を切るも、4年連続で赤字を計上するなど経営は不振を極めました。その後、19年にヤマダホールディングス(HD)と資本業務提携を結びましたが業績は伸びず、20年に久美子氏が社長を辞任。21年に大塚家具はヤマダHDの連結子会社となり、事実上の消滅となったのです」
そんな経営手腕に疑問符が付いた久美子氏は、05年に自身が立ち上げていたクオリア・コンサルティングの代表を務めているが、今回、新たにメルコHDの社外取締役に選任されたのだ。同社によると、豊富な経験や実績のある久美子氏に企業価値の向上に貢献してもらえることを期待しての選任という。
「メルコHDとしては、久美子氏の話題性に期待したところも大きいとのでは。実際、社外取締役に就任したことで各メディアに大きく報じられ、注目を集めるという意味では成功したといえる。また、経団連が30年までに役員に占める女性比率を30%まで引き上げるよう呼びかけている影響もあるのでしょう」(経営コンサルタント)
最近では女優の酒井美紀が「不二家」、いとうまい子が学習塾「TOMAS」、シドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子が「スズキ」の社外取締役に就任するなど、企業イメージ向上も兼ねて女性有名人を起用するケースも増えている。そんな流れからの久美子氏の起用のようだが、ありがちな「お飾り状態」にはなって欲しくないものだ。
(小林洋三)