やはり、1本にまとめた方がよかったのではないか。続編が2部作になった「東京リベンジャーズ2」のことだ。
その前編「~血のハロウィン編‐運命‐」は4月28日公開。後編「~血のハロウィン編‐決戦‐」は、6月30日から公開された。単純に、興行収入から見てみよう。
1作目の「東京リベンジャーズ」は45億円(2021年公開)。続編の前編は約27億円。なので、今回の後編が18億円をクリアすれば、1作目を上回ることになる。事実、スタート(3日間)で約6億円を記録し、18億円超えはほぼ間違いない。
ややこしい興収の推計をしたが、続編を2部作にしたのは製作側からすれば、一応は思惑どおりということだろう。では観客側からすれば、どうだったのか。ちょっと微妙ではないだろうか。
気になったのは上映時間だ。2作ともに、それぞれ90分ちょっと。長尺上映が増える昨今、かなり短い部類に入る。2部作にしたから、その時間になったのだろう。
ただ、2本ともが映画の冒頭数分間、前話のダイジェスト風な描写がある。これを差し引くと、それぞれが90分を切ってくる。
となれば、2本で2時間50分ほどとなる。この尺数を、さらにギュッと縮める…そうすれば、1本でだいたい2時間30分から40分あたりまでに収めることも可能だ。その時間内で作品のエッセンスをうまく絞り込むことができれば、作品の充実度、満足感は一段と上がるだろう。そのようなことを考えてしまう。
2部作の前編と後編は、少なくない人が両方を見るだろう。入場料金は2倍になる。若い観客が多いから、結構な負担だと思う。それが1本になれば、中身の充実度を伴いつつ、払う金額も安くなる。観客にとっては、いいことだらけである。
「東京リベンジャーズ」は、トータル「3本」を見たが、とにかく俳優陣が皆、素晴らしい。今が旬の若手の実力派俳優たちが、それぞれの役柄、持ち場で圧倒的な存在感を見せ続ける。
後編を見て改めて感じたのは、主軸となるヒーロー、アンチヒーローがいないヤンキーたちの集団抗争劇であったことだ。
集団抗争劇の名作である、かつての「仁義なき戦い」はシリーズ全体を、菅原文太が演じた主人公が引っ張っていく。「東京リベンジャーズ」は、そうならない。主役、脇役それぞれのヒエラルキーが粉砕されているのである。このような作品の構造は、時代の要請によるものとも思えてくる。
興収は大事だが、シリーズものは今後にとっても、2本目が極めて重要だ。中身しだいでは、1作目の興収を超えることもありうる。そのようなことも思いつつ、「東京リベンジャーズ2」を丸々1本で見たかった。
(大高宏雄)
映画ジャーナリスト。キネマ旬報「大高宏雄のファイト・シネクラブ」、毎日新聞「チャートの裏側」などを連載。新著「アメリカ映画に明日はあるか」(ハモニカブックス)など著書多数。1992年から毎年、独立系作品を中心とした映画賞「日本映画プロフェッショナル大賞(略称=日プロ大賞)」を主宰。2023年には32回目を迎えた。