梅雨前線の影響で線状降水帯が発生し、九州北部を中心に記録的な大雨となった7月10日。岸田文雄首相は記者団に対し、次のように語った。
「亡くなられた方の御冥福をお祈り申し上げ、全ての被災者の皆様に御見舞を申し上げる。政府として人命第一で、対応に万全を期していきたい」
その後、岸田首相が向かったのは、六本木の高級ステーキハウスだった。自民党の世耕弘成参院幹事長、野上浩太郎参院国対委員長に対し、通常国会の慰労を行うためであり、2時間半近くの懇談。これには自民党の閣僚経験者から、
「被災された方々が辛い思いをしている時に、身内とステーキを食べている場合か!」
と疑問の声が出ている。そりゃそうだ。
岸田首相は10日午後、谷公一防災担当相らから2回にわたって豪雨に関する報告を受けたが、いずれも15分ずつ。米投資ファンドの共同最高経営責任者(CEO)とは、28分も会談している。いったいどちらが大事なのか。先の閣僚経験者は、
「2009年の麻生太郎内閣を思い出す」
と振り返る。当時も西日本を中心に豪雨被害を受けたが、麻生首相(当時)は衆院解散・総選挙を優先した。麻生氏は解散後初の日曜日となった7月26日に、豪雨被災地である山口県防府市を視察しようと羽田空港まで行ったが、「二次災害発生が懸念される」として断念し、都内で過ごすことに。地方遊説を続けた民主党・鳩山由紀夫代表との勢いの差を示す形となり、選挙の結果、自民党は大敗。野党に転落した。
「リーダーとして危機管理の気構えが示される時に、後手に回ったのが麻生さんだった。岸田首相にも、ステーキを食べている場合なのかと、アドバイスする側近がいない。麻生政権の二の舞にならないといいが…」
前出の閣僚経験者はそう言って、心配そうな顔をするのだった。