エンゼルス・大谷翔平が、政治利用されかねない状況になっている。マイナンバーのゴリ押しとトラブル続出で、支持率2割台に低下した岸田文雄内閣が起死回生の策として、大谷に国民栄誉賞授与を検討し始めるというのだ。
大谷は35本塁打を放ち(日本時間7月21日現在)、キング独走状態。日本人初のメジャー本塁打王獲得への夢は膨らむばかりだ。それどころか昨季、ヤンキースのアーロン・ジャッジが樹立した62本のア・リーグ記録更新も視野に入っている。
8月2日のトレード期間までに、ナ・リーグの球団にトレードでもされない限り、2年ぶり2度目のMVP獲得も、現段階でほぼ確定だろう。過去、メジャーリーグでシーズンMVPを獲得した日本人選手は、2001年のイチロー氏だけ。2度目の受賞となれば、世界のイチローもできなかった偉業達成となる。
そこで浮上するのが、国民栄誉賞なのである。辞退したイチロー氏と世界の盗塁王・福本豊氏を除けば、これまで日本の野球選手で国民栄誉賞に輝いたのは王貞治氏、衣笠祥雄氏、長嶋茂雄氏、松井秀喜氏の4人しかいない。大谷は「5人目」としての資格を十分に持っている。
国民栄誉賞表彰規定には「この表彰は広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて、その栄誉をたたえることを目的とする」とある。だが時折、時の内閣の人気取りの施策として用いられてきた。
日本国内でも話題を一身に集めることになる国民栄誉賞を与えれば、内閣のイメージアップにつながるのは間違いない。
ただ、これまでの大谷の言動を振り返ると、野球に関すること以外には、かなり無頓着だ。表彰式に時間を取られるより、トレーニングをしたいと、拒否するかもしれない。
(阿部勝彦)