で、そんな心配がある程度出尽くした後、日々重ねていった打ち合わせの中でライブの具体的な内容がはっきりと形になり、さらにはその打ち合わせが毎回笑いの絶えない時間になると殿の中で“何かが見えた”ようで、もうそこから先は、
「こうなったら2時間、メチャクチャやってやるか!」
「だけど、この内容ならあと3回はライブできるな!」
と、やる気みなぎる“安心期”へと突入していきました。そして、ライブ1カ月前、たった200枚しか販売されないプレミア感満載なチケットが、発売後わずか1分で完売になり、さらにすぐそのチケットがネットオークションに出回って高値をつけている、といった情報を耳にした殿は、
「あれだな。オークションで高い金出してチケット買って来た客はよ、当日舞台の上から説教してやるか!」
と、なんとも不条理でお門違いな、明らかに間違ったやる気をみなぎらせたのです。
そして、殿のやる気はさらにおかしなほうへ傾き、
「北郷、あれか。打ち上げはどうせ汚い焼き鳥屋か?」
と、もはやライブそのものを通り越し、ライブ終わりの打ち上げ会場の心配までし出す始末で。わたくしがすぐさま「いえ、渋谷で一番うまいと評判の焼き肉屋を抑えました」と、圧倒的肉食な殿の体質を考慮した返答をすると、
「へー、そりゃいいな!」
と、まず一度わたくしの答えに絶賛されたのですが、続けてすぐ、
「だけど結局、俺が“打ち上げ代”出すんだろ?」
と、“どうせ最後は俺がみんなの面倒をみなきゃいけねーのか”的な心配をされてきたので、「いえ、打ち上げ代もライブの売り上げでまかなえるようにしてあります。ですから、殿は一切財布を開く必要はございません」と、少しばかり胸を張って答えると、殿は食い付き気味に、
「なんだ、いいライブだな!」
と、再度絶賛されたのです。そして、つい先日、マネジャーから10月のスケジュール説明を受けた殿は、
「しかし10月も相変わらずなんやかんや忙しいけどよ、一番大変で楽しみなのが金にならねーライブってのが笑っちゃうな。まーいいか。いよいよ盛り上がってまいりました!」
と、“10月はとにもかくにもライブだな”宣言を炸裂されると、さらに続けて、
「こうなったら来年はよ、俺が○○○の支配人をよく知ってるから、○○○でやるか!」
と、大変歴史と伝統のある豪華な大型劇場の名称を出し、“「第2回 たけし単独ライブ2015」開催決定!”を、高らかに宣言されたのでした。