アスレチックスをFAとなっていた元西武・中島の争奪戦をオリックスが制しました。中島は3年ぶりの日本球界復帰となります。
1度もメジャー昇格を果たせませんでしたが、獲得に名乗りを上げた球団は、まだ年齢的にも若く、勝負強い打撃は健在と判断したのでしょう。阪神も地元・兵庫出身のスラッガーの獲得に本腰を入れていましたが、振り向かせることはできませんでした。
それにしても、阪神と同じ関西を本拠地とするオリックスの今オフの補強は目をみはるものがあります。球団としても昨季、シーズン最終戦で優勝を逃した悔しさが相当強かったのでしょう。中島だけでなく、日本ハムからFAの小谷野、前DeNA・ブランコ、投手でも前広島・バリントンの入団が決定しました。ブランコは4番打者としてかなり期待できるのではないでしょうか。豪快に振り回す打撃スタイルは、力勝負の割合が多いパ・リーグの野球のほうが合うはずです。糸井、T─岡田、中島、小谷野と前後の3番、5番を打てる打者もそろっています。打倒ソフトバンクを果たすための豪華なオーダーを組むことが可能となりました。
同じく今季2位から優勝を目指す阪神の、今オフのここまでの補強作戦はどうか。周囲でささやかれているように、誤算続きと言わざるをえないでしょう。投手では水面下で動向を注目していた中日・山井、日本ハム・宮西がFA権を行使することなく、残留を決めてしまいました。ロッテからFA宣言した成瀬も在京志望が強く、はやばやとヤクルト入りが決定。そのヤクルトは日本ハムからFAとなった大引の獲得にも成功しており、こちらもオリックスと同様に投打に申し分ない補強に成功したのではないでしょうか。
かつてのFA戦線は、阪神、巨人の独壇場でした。西武からFAとなった清原がそうだったように、「巨人で野球をやりたい」という思いを持った選手が多かったのです。しかし、今はそういう時代ではなくなりました。今オフの選手の流れを見ていると、なおさら時代の変化を感じます。パ・リーグからセ・リーグへという一方通行の移籍の流れも昔の話です。今は阪神や巨人でなくても、自分の存在をアピールできるようになったのでしょう。
なぜ「巨人ブランド」が崩れたのか。テレビ中継の変化も大きな要因でしょう。一昔前は全国区の中継は巨人だけという時代でした。それが近年、地上波での巨人戦中継は年々減ってきたのに比べ、CS放送ではほぼ全球団の試合が見られるようになったのです。
また、親会社の力で考えても、ソフトバンクのように豊富な資金力を持つ球団が誕生しました。今オフもメッツをFAとなった松坂を破格の待遇で獲得したように、国内のマネーゲームではまず負けないでしょう。金銭的な条件が同じなら、むしろ阪神や巨人のような特殊な環境でプレーするより、野球だけに専念できるチームを選ぶ選手の気持ちも理解できます。
阪神Vのための「後継者」育成哲学を書いた掛布DCの著書「『新・ミスタータイガース』の作り方」(徳間書店・1300円+税)が絶賛発売中。