スマートフォンの急激な普及により、世界各国で起こっているとされるのが、スマホ依存症だ。ところが、このスマホ依存が人間だけでなく、動物園にいるゴリラの間にも飛び火しているとして、世界の動物園が注意喚起を呼びかける事例が相次いでいる。ゴリラとスマホ…にわかには信じがたいが、これはいったいどういうことなのか。
カナダ・トロントの動物園では、2009年9月生まれのオスのゴリラ、ナシールが来園者の携帯電話の動画に異常な興味を示し、家族関係や行動に悪影響が及ぶようになったとして、ゴリラ・エリアに看板を設置。スマホの動画や画像をゴリラに見せないよう、来園者に注意を呼び掛けているという。動物ジャーナリストが解説する。
「ナシールに限らず、スマホの動画に執着するあまり、仲間との交流ができなくなってしまったゴリラは相当数おり、昨年はアメリカ・シカゴの動物園にいる、アマレという16歳のオスゴリラが、やはり来園者が見せたスマホで依存症になった。仲間との共同生活を営めず、孤立してしまったのです。他の動物園でも同様な兆候を見せるゴリラが増えていることから、シカゴの動物園ではゴリラのブース前にロープを張り、距離を取る措置を実施するなど、可能な限りゴリラにスマホを見せないよう苦慮していますね」
つまり人間のエゴが、動物の生態系を脅かしているというわけだが、実はスマホとゴリラには以前から浅からぬ関係があるとされる。アフリカのコンゴ民主共和国ではスマホなどの携帯電話を巡り、ゴリラたちの命が失われているというから穏やかではない。
「携帯電話に多くのレアメタルが使用されていることはよく知られる話ですが、重要なレアメタルのひとつがコンゴ民主共和国で産出される『タンタル』という鉱物なんです。そのため、コンゴでは携帯電話の普及に伴ってタルタルが武装勢力の資金源となり、紛争がエスカレート。結果、採掘のためにジャングルが荒らされ、採掘に邪魔だとの理由で、たくさんのゴリラが殺された。それだけでなく、なんと採掘に携わる鉱夫たちの食糧にもなっているというんです。つまり、ここでも人間のエゴにより、何の罪もないゴリラが大量に殺されてきたのだと…」(前出・動物ジャーナリスト)
アメリカの動物園には、レアメタルの採掘が盛んなコンゴ民主共和国やルワンダ、ウガンダなどで捕獲されたマウンテン・ゴリラやヒガシローランド・ゴリラも多い。せっかく難を逃れたというのに、再び動物園でツライ目にあわされるとは…。人間の業の深さを感じるばかりなのである。
(ジョン・ドゥ)