独裁者プーチンは「毒殺」による暗殺も極度に恐れている。
本連載の第4回目(8月4日配信)では、外部による通信傍受に異様な警戒を示すプーチンのパラノイア状態を「電波系神経症」として炙り出した。同様に、毒殺に対する神経の尖らせ方は「毒殺神経症」とでも呼ぶべき異常さだ。
その極端な警戒ぶりについて昨年、イギリスの大衆紙「サン」はこう報じた。
「暗殺を恐れて疑心暗鬼になっているプーチン大統領は、食べ物や飲み物の毒見を担当するチームを秘かに雇っている」
言うまでもなく、秘密の毒見役チームを編成した理由は、毒殺を恐れてのことだ。プーチンの動静に詳しいロシア専門家も、次のような事実を暴露するのだ。
「毒殺に対するプーチンの警戒は、ウクライナへの侵攻が開始されて以降、さらに常軌を逸しています。最近のプーチンは、パーティーなどで出される飲み物も一切、口にすることはありません。その代わりに持ち歩いているのが、ロシアの紋章が入ったタンブラー。プーチンは専用のタンブラーに入っている飲み物しか摂取しないのです」
これほどまでに警戒感を示すのも、そもそもプーチン自身が毒殺に手を染めてきたからだ。
事実、KGB(旧ソ連国家保安委員会)の情報将校を務めていたアレクサンドル・リトビネンコ氏は2006年、亡命先のロンドンで、放射性物質のポロニウムによって毒殺されている。亡命後、リトビネンコ氏はプーチン政権批判を繰り広げていた人物で、プーチンの命によって毒殺されたと言われるのだ。
また、ロシアの反体制派指導者として知られるアレクセイ・ナワリヌイ氏も2020年に、ノビチョク系の軍用神経剤による毒殺未遂事件に巻き込まれている。ナワリヌイ氏は奇跡的に一命を取りとめたが、犯行はプーチンの指示だったとされているのだ。
その成れの果てが、専用のタンブラーまで持ち歩く、現在の毒殺神経症である。
まさに自業自得の結果と言っていい。
(つづく)