スポーツ

【追悼秘話】元阪神・古沢憲司が鉄板焼き店から出前させた「とんでもない場所の待合室」

 先日亡くなった元プロ野球選手の古沢憲司さんは、エピソードに事欠かない人物だった。ニックネームはゴルフ用語の「バーディー」。その由来は本人が語るところによると「パーよりも足りないから」だが、もちろん冗談半分で付けられたものだろう。

 現役時代に阪神、広島、西武の3球団を渡り歩いた古沢さんは、真っ暗闇の球場でマウンドに立った経験を持つピッチャーだ。

 その「事件」は広島でプレーしていた1982年7月8日、岡山県野球場で行われた阪神戦の試合中に起こった。7回表の阪神の攻撃中、古沢さんが先頭打者・佐野仙好にカウント3-2からの6球目を投じようと、振りかぶった瞬間だった。グラウンドを照らしていた6基の照明灯が一斉に消えたのだ。

 18分後、水銀灯が明るさを取り戻すのを待って試合は再開されたが、原因は信じられないものだった。1匹のアオダイショウが照明施設に入り込んでショートさせたため、球場内に電気が供給されなかったのである。

 これは野球規則五・一〇の「プレーの進行中にライトの故障が生じたとき、その瞬間完了されていないプレーは無効とする」に該当。無効となった。試合に出場していたミスター赤ヘル・山本浩二をはじめ、選手たちは「一瞬、何が起きたのか分からんかった」と話している。これで投球のリズムを崩したのか、古沢さんは阪神打線に捕まり、敗戦投手となっている。

 現役引退後、広島に住んでいた古沢さんは、性サービス店街近くの、とある鉄板焼き店を行きつけにしていた。ここは店の作りは質素だったが、地元では知る人ぞ知る大人気店で、野球関係者や芸能人の来店も多く、席を確保するのが難しかった。

 ある日のことだ。いつものように店を訪れた古沢さんだったが、超満員で座れない。そこでひらめいた策がなんと、近所の性サービス店の待合室を使うことだったのである。その店には用事がないのに入り込み、待合室に料理を出前させたとか。まさに愛すべきキャラクターだった。

(阿部勝彦)

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