加齢とともに気になるのが目の病気だ。中でも「白内障」は、目の中でレンズの役割をしている水晶体が濁り、視力が低下する病気として知られている。一般的には、加齢が原因とされるが、「アトピー性皮膚炎」により発症するケースもあるのだ。
これは「アトピー性白内障」と呼ばれる病気。「アトピー性皮膚炎」が白内障に影響する明確な理由は、いまだ完全には明らかになっていないが、「アトピー性皮膚炎」によるかゆみを抑えるために、瞼を強くこすったり、顔や目の周りを叩いたり、目への刺激を与えてしまうことが一因なのでは、と指摘されている。他にも、アトピー性皮膚炎の治療に使用される「ステロイド剤」の副作用も考えられている。
「アトピー性白内障」の特徴は、「視力低下が急激に進むこと」だ。加齢性の白内障と異なり、初期から水晶体の真ん中に濃い濁りが発生するため、発症してすぐに見え方の異常を感じるようになる。
「白内障」に比べて、進行スピードが速いことも特徴だ。アトピー性皮膚炎の影響により、水晶体の周りの皮質が、加齢性白内障よりも溶けやすいからだ。水晶体が真っ白になる「成熟白内障」に進行するまで、数カ月しかかからないこともある。
治療法は、加齢性白内障と同様で、手術によって濁りを取り除くことが多い。濁った水晶体を超音波で砕いて吸引し、水晶体の代わりに、人工のレンズを挿入する。
「アトピー性白内障」だけではなく、アトピー性皮膚炎が原因で、眼瞼炎、アトピー性結膜炎などの炎症、網膜剝離、網膜裂孔などの網膜の疾患などの合併症を引き起こす危険もある。
この病気は早期発見・早期治療が重要だ。アトピー性皮膚炎を患っている場合は、一度、眼科に相談してみることをオススメする。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。