スポーツ

岡田阪神「モヤモヤ狂騒曲」(3)「いつから、こんなに阪神ファンが増えたんだ?」

 9月に入り、一度消滅した優勝マジック「18」を再点灯させた岡田阪神。7日にはその数を「12」にまで減らし、8日からの2位・広島との直接対決の結果次第では、18年ぶりのリーグ制覇に大きく近づくことになるが、ファン歴50年以上の作家・増田晶文氏のモヤモヤは解消されず。

 虎党が甲子園球場を埋めつくす。ビジターでの盛り上がりも凄まじい。

 東京ドームに横浜、神宮。私は定席の一塁側外野席最上段からタイガースを???激励、横目で三塁側の阪神ファンをみやる。

 ヒッティングマーチに六甲おろし。拍手に歓声、ときに悲鳴たまに怒号が混じる。とはいえ、総じて明るく愉しい老若男女の応援ぶり。私は月桂冠ニューカップをぐびり、酔うほどにモヤモヤが湧いてくる。

「いつから、こんなに阪神ファンが増えたんだ?」

 私が頻繁に甲子園へ赴いた大学生時代、80年頃は巨人戦以外ガラガラ。20時それとも5回だったか、途中から入場料が安くなったことも覚えている。ぺんぺん草しか生えない原っぱみたいなスタンドから、投球練習中の工藤一彦に、

「えらい手投げやな」

 本人に聞こえてしまい、ギロリと睨まれた。

 今や阪神戦の入場券はプラチナチケット。TBS(6月19日放送)によれば、今年の平均観客数は4万1065人で日本一、世界でもメジャーを押しのけ2位というから凄まじい。最終的にどんな数字を残すのか、岡田彰布監督の好采配で優勝でもしたら(するに決まっているのだが)トップのドジャースを抜くかもしれない。

 増殖を続ける阪神ファン。しかし、彼らと連帯する気になれない。やっぱり、どこかが違う‥‥。

 私にとって、阪神は大阪そのものだった。生まれもってのヘソ&ツムジ曲がり、長じて根性もネジれた私は、権力や権威を前にすると反抗的になる。偉そうにしているヤツは大嫌い。

 少年時代、ONを擁する讀賣巨人軍が連続して日本一に輝いておった。巨人、大鵬、卵焼き。私にはまったく面白くない。

 足下をみやれば大阪には四つも球団があった。とはいえ阪急、南海、近鉄は日本シリーズでしか巨人と対戦できない。ちなみに実家は近鉄沿線の布施。ところがバファローズはボロカスに弱く優勝に縁遠かった。

「よし、やっぱし阪神や」

〝巨人=東京〟は大阪人の共通認識、大阪にとって東京こそ最大のライバルであり、眼の上のタンコブ。大阪優位を強調する余り、「天下の台所」「東洋のマンチェスター」なんて大昔の栄光を口にする大人が大勢いた。そこに70年の万国博覧会がカンフル剤となり、「東京ナニするモノぞ」の気概のみ空回りしていた。

「うん、阪神しかないわ」

増田晶文(ますだまさふみ・作家):昭和35(1960)年大阪生まれ。最新刊に時代小説「楠木正成 河内熱風録」。吉本関係の著作として「吉本興業の正体」(ともに草思社)がある。

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