注目の4番ですが、小久保監督は会見で中田を指名しました。今季は打点王に輝き、CSでも4試合連続ホームランを放つなど抜群の勝負強さを見せました。ですが、ジャパンの「真の4番」となるためには、17年までにもう少し安定感を身につけてほしいと思っています。今季の成績は打率2割6分9厘、27本塁打、100打点。最低でも2割8分はクリアしてほしいところです。
WBCでは過去3大会を見てもわかるように、一発か三振かで勝負を決めるような4番打者は必要ありません。つなぐ4番でいいのです。ですから、基本的に中田の4番でOKですが、機能しないようであれば、こだわらないほうがいいでしょう。打って、守れて、走れるメンバーがそろっています。「ベースボール」ではなく、「野球」で勝つことを考えたほうがいいのです。
投手では大谷、藤浪と、あと1、2年で球界の絶対的エースになれる逸材がそろっています。17年の大会で、ダルビッシュや田中もジャパンの一員として投げられれば、世界最強の布陣を形成できるはずです。
私の野球人生を振り返っても、日米野球では大きな経験と財産を手に入れることができました。当時の全日本は王さんや山本浩二さん、福本さんら、正真正銘の日本代表でした。その一員として選ばれるだけでうれしかったことを覚えています。成績を関係者にあらためて調べてもらうと、9試合に出場し、打率4割3分5厘(23打数10安打)、1本塁打、6打点でした。そんなに打っていたのかと驚きましたが、78年のレッズ戦(後楽園)の一発は鮮明に覚えています。メジャー通算311勝の殿堂入り右腕のトム・シーバーのカーブを左翼席へ放り込み、夢見心地でダイヤモンドを一周しました。
当時、私は23歳。シンシナティ・レッズは「ビッグ・レッド・マシーン」と呼ばれる70年代の最強チームで、通算4256安打のピート・ローズ、3年連続打点王のジョージ・フォスター、メジャーの歴史的名捕手のジョニー・ベンチ、ケン・グリフィー・シニアら、そうそうたるメンバーがそろっていました。彼らのパワーを目の当たりにし、私も専門家にメニューを作成してもらい、ウエートトレーニングを取り入れるようになりました。翌79年のシーズンは48本塁打で初のホームラン王になれましたが、日米野球での経験も大きな契機となりました。
技術面と同時に大きな影響を受けたのが、ピート・ローズのハッスルプレーです。一生懸命に楽しむ彼のアグレッシブなヘッドスライディングに、野球人としてすばらしい教訓を得ました。今回、侍ジャパンに選ばれた選手たちも、メジャーの一流選手から大きな刺激を感じてもらいたいと思っています。
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