銀色のトレーの上に置かれ、果物がのった、黄土色で描かれた平らなパン。イタリア文化省が南イタリアの都市遺跡ポンペイで、「ピザの祖先」とみられる食べ物のフレスコ画が見つかったと発表したのは、今年6月だった。
ポンペイは古代ローマ時代の西暦79年に発生した、ヴェスヴィオ山の大噴火により埋没した都市。一般的にピザの発祥はナポリとされるが、このフレスコ画の発掘により、地元メディアでは「これは2000年前、すでにローマ人はピザに似たものを食べていた証拠だ」と大々的に報道し、話題になったものである。
フレスコ画というのは壁に漆喰を塗り、それが「フレスコ(新鮮)」な状態、つまり生乾きのうちに水または石灰水で溶いた顔料で描くという手法のことだ。オーストリアで美術史家によって発掘されて以降、謎が謎を呼ぶフレスコ画として、考古学者のみならず、オカルトファンをも虜にしているものがある。それが2002年に南部カルンテン州のマルタ村で見つかった世界的に有名なキャラクター、ミッキーマウスに酷似したフレスコ画なのである。
「この壁画が見つかったのは、マルタ村のケルンテンにある教会で、分析の結果、描かれたのは今から700年前の14世紀でした。壁画は旅人を守る神(セントクリストファー)にひざまずく動物の一員として描かれ、体長はおよそ50センチ。大きな耳と上を向いた長い鼻、愛嬌のある口元が最大の特徴ですが、700年前というと、鳥獣の戯画が様々な場所に描かれていた時代。イタチやビーバーの擬人画説を唱える研究者も多いようです」(欧州の歴史に詳しい研究家)
ただ、このフレスコ画を見る限り、ミッキーマウスの特徴でチャームポイントでもある大きな耳は、それ以外の何ものにも見えないのだが…。
「この地方の古い言い伝えによれば、イタチは口で交尾を行う動物とされ、子供は耳から生まれるてくると信じられていたそうです。そのため、フレスコ画には大きな耳と特徴のある上向きの口が際立って描かれたのではないかと言われています」(前出・研究家)
ちなみに、ミッキーマウスの権利を保有する米ウォルト・ディズニーでは近年「パブリックドメイン」(著作権保護の存続期間が切れ)が次々に消滅。昨年には、1961年から保有する「くまのプーさん」の原作著作権が切れて二次創作が自由になり、超低予算ホラー映画「プー あくまのくまさん」が上映された。映画サイトのライターが解説する。
「近年中に、シンデレラを大胆にアレンジした『シンデレラズ・カース(原題)』も上映されると聞いていますし、1928年に『蒸気船ウィリー』に登場したミッキーのキャラクターも、来年には著作権保護が期限切れを迎えますからね。来年以降、世界各地で登場するであろうミッキーもどきの影響もあり、マルタのフレスコ画が再び脚光を浴びるかもしれません」
来年は謎のフレスコ画に観光客が殺到、なんてこともあるかもしれない。
(ジョン・ドゥ)