天体物理学の世界には「エディントン限界」という明るさの限界値があり、これは爆発直前にしか、そのレベルの明るさに達しない。ゆえにそうした天体は、理論上は存在が不可能とされてきた。
しかし、実は「エディントン限界」を超える明るさの天体、超高輝度X線源(ULX)が、おおぐま座の銀河M82に中に存在。その理由が長い間、解けない課題として世界の科学者を悩ませ続けてきた。
このULXとは、太陽の1000万倍もの明るさで輝く天体のことだ。惑星が崩壊し、その残骸がブラックホールなどの強力な重力に引き寄せられ、ぶつかる。それによって強烈な熱を持ち、同時に放射される光だとされてきた。ぶつかる物質が多ければ多いほど、放射される明るさも増すことになる。
「とはいえ、太陽の1000万倍となれば理論上、その明るさでは星が耐えられるエネルギーをとっくに超えているため、バラバラに砕け散ってしまうはずなんです。ところが銀河M82にある『X-2』は、その限界を500倍も超えてなお、平然と輝いている。つまりこの謎の天体は、完全に物理学の法則を無視しながら、宇宙に存在しているわけなんです」(宇宙物理学研究者)
そんなことから、科学者の中でも様々な理由が考えられてきたのである。
実は昨年10月に「The Astrophysical Journal」に掲載された論文が、世界の科学者たちの間に衝撃を与えている。それがM82のX-2は、実は「中性子星」なのではないか、との仮説だ。前出の宇宙物理学研究者が解説する。
「中性子星というのは、太陽の10倍程度の質量を持つ星が、寿命により超新星爆発を起こした後にできた天体のことです。小ぶりですが高密度なため、太陽さながらの重さがある。したがって重力はすさまじく、ざっくり言うなら、その地表重力は地球のそれの100兆倍あると言われています。つまり、そこに物体が落下すれば、その衝撃はケタ違いなはず。そこで研究チームは、ありえないほどの光が発生しても、X-2が星としてまとまっていられるのは、そもそもX-2が中性子星であり、ここから発生する強烈な磁場がなんらかの作用を及ぼして原子を変形させているのではないか、という仮説にたどり着いたわけです」
一説には、巨大なブラックホールが星を破壊する瞬間には、太陽の1000兆倍の明るい光が放たれるといい、かねてから地場と光との関係については様々な研究が行われてきた。さて、X-2が「エディントン限界」を超えても存在する理由と地場との関係は…。
(ジョン・ドゥ)