「胸がムカムカする」「みぞおちあたりがキリキリ痛い」──いわゆる「胸やけ」の症状は「逆流性食道炎」の可能性が高い。かつて日本人には少ない病気だったが、近年、急激に増えているという。
胃液には胃酸と消化酵素が含まれていて、本来は食べ物を消化したり、悪い菌をやっつけたりする重要な役割を果たしている。しかし、胃酸が何らかの原因で逆流すると、炎症を起こしたり、粘膜に潰瘍ができる。これが「逆流性食道炎」だ。
原因のひとつは加齢。生活習慣の悪化やストレスなども影響する。ふだん、脂っこい食事を多く摂る人、過食傾向がある人のほか、運動不足の人や、喫煙者、ストレスのある人も発症しやすい。
症状を抑えるには、胃酸の分泌を少なくする市販薬の「H2ブロッカー胃腸薬」を使用するのが一般的。だが、長期にわたって使用するのは禁物だ。そのため、薬をやめると再発する場合や、胸やけが1カ月以上慢性的に続いている場合には、医療機関を受診してほしい。
医師の問診によって、食道の粘膜を保護する薬、食道の運動機能を改善する薬、胃酸の分泌を抑える薬、胃酸を中和する薬などが処方される。
この病気のやっかいな点は、再発しやすいことだ。
食生活では早食いをやめ、刺激物や脂っこいもの、アルコールを控えること。腹八分を心がけて。気をつけてほしいのは、食後すぐに横にならないこと。胃からの逆流を防ぐため、2~3時間は体を起こしておいたほうがいいからだ。
そして、胃からの逆流を減少させるために、寝る姿勢も有効になってくる。ベッドを少し起こして傾斜をつけ、枕を高くして頭を少し高い位置にするのがお勧めだ。
再発防止のためにも、まずは食生活や生活習慣の見直しから始めてみよう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。