食前野菜がもたらす効果はこれだけではない。
現在、500人の糖尿病患者を1人で診ている吉田氏が続ける。
「生野菜なら大きなお皿で山盛りに食べると、おなかがいっぱいになった感覚を脳が得られます。野菜で満腹中枢を先に満たせば、主食の米を自然と減らせるようになります」
一般の食生活で「糖」の成分となるのは主食である米やパンといった炭水化物である。食前に野菜を摂ることは、痩せる手助けだけではない。糖尿病に重要な「糖」のコントロールにも効果があるというのだ。
「根菜や白菜、小松菜などを煮て食べるのもよいでしょう。野菜を食べずに一口目に御飯を食べると、30分もしないうちに血糖値が急に上昇します。しかし、野菜を直前に食べることで、腸の粘膜に食物繊維がくっつき、次に食べた米などの主食の吸収速度が遅くなります。いきなり炭水化物を摂った場合の3分の1ぐらいの速度で吸収されるのです」(吉田氏)
野菜から摂り始める食事は、体重を減らし維持するだけではなく、多くのメリットをもたらすのだ。糖尿病の克服は「炭水化物との戦い」であると言えよう。
「ただし、炭水化物(ブドウ糖)をまったく摂らないのもよくない。ブドウ糖は脳の栄養源であるため、炭水化物を摂らないと認知症になる年齢が早くなるし、記憶力も落ちるので、必要量は食べないといけない。その限界量が、今食べている量の3分の1を目安にするといいということです」(志賀氏)
糖尿病対策の根幹は食事療法であることは間違いないが、忘れてはいけないのはタンパク質の摂取である。カロリー消費量の多い筋肉が落ちると、痩せにくい体になってしまうからだ。タンパク質は筋肉を作る重要な栄養素。その筋肉を維持するには運動も重要である。
「散歩を選ぶ人が多いのですが、歩行はゆっくりでは意味がないのです。1分間速く歩いたら1分間ゆっくり歩くと、カロリーがものすごく消費される。これを1日1~2時間続けると、糖尿病が劇的に改善し、余病もなくなります」(志賀氏)
こうした自力克服法の他に、過食に陥る原因となるストレスへの対策もカギになる。
「1人でできる解消法として、歌うことをお勧めしています。カラオケなどは最適でしょう。できれば元気が出るものがいい。歌詞もメロディも明るいものを選んだほうがいいと思います」(吉田氏)
食事・運動・カラオケの組み合わせ療法で、糖尿病1000万人時代を乗り切ろうではないか。