NHK朝ドラ「らんまん」がいよいよ、最終週を迎える。植物学者・牧野富太郎をモデルにした本作。主人公の槙野万太郎を演じた神木隆之介はもちろんだが、妻の寿恵子を演じた浜辺美波が素晴らしく、後半は完全に主役を食った形だ。
その演技もさることながら、日本髪で着物姿の浜辺がチャーミングで、娘時代の天真爛漫でおきゃんな感じも可愛くてよかった。結婚後、貧乏ながらも夫の夢を叶えるために一所懸命支える姿も健気。さらに待合茶屋の女将になってからは妖艶さまで醸し出し、朝からその色香にクラクラ、ただただ美しい。「らんまん」好調の要因が彼女にあることは間違いない。
そんな浜辺が「平野レミの早わざレシピ」(NHK総合)に登場した。毎回、料理愛好家の平野レミが、生放送での時間内に十数品の料理を実演。ゲストが料理の手伝いや試食を行う番組で、レミの底抜けに明るいキャラクターや豪快な調理の仕方、盛り付け、それに翻弄されるゲスト、あたふたする進行役のNHKアナウンサーが見どころとなっている。
この日のゲストは浜辺のほか、ヒコロヒー、三谷幸喜。トップバッターで料理のアシスタントを担ったのが浜辺だった。
唐突に「日本に伝わる素晴らしい言葉でいくわよ。エイ!エイ!」と言い出したレミに対し、動じることなく「オー!」と声を上げる浜辺。その直後、いつもの調子でまな板の上のニンニクをボールの底で豪快に叩き潰したレミに、一瞬目を丸くする浜辺だが、手順を説明するレミの言葉に「フムフム」「なるほど」と合いの手を入れ、途中途中で「いい匂い」と感想を挟む。その後もレミがガスコンロを消し忘れたのに気付くと、そっとコンロのスイッチを止めるなど、きめ細かい気配りを見せた。
レミの得意料理に、手間を省いて時短をする「食べれば○○」というレシピシリーズがある。その誕生秘話について「いちばん最初に考えたのは、処女作品はさぁ、コロッケ。処女作品って、結婚してたけどね」と含みをもった下ネタを(NHKの生放送なのに!)ぶっこんできたレミ。それに対しても、浜辺は笑顔で対応する。今年23歳とは思えない落ち着きっぷりを見せたのだった。
「杏仁豆腐」ならぬ「安心豆腐」という料理を作る際、レミが「(材料に使うのは)味のしない豆腐がいいの。っていうことは、高い豆腐? 安い豆腐?」と質問すると「お手頃な方ですかねぇ」と浜辺。これにはレミも「いい言葉ね~」とその上品さに感嘆するしかなかった。
その若さに見合わぬ落ち着きと品の良さの理由がわかったのは、試食コーナーでのことだった。レギュラーの中山秀征から「敬老の日にちなんで、おじいちゃん、おばあちゃんの思い出は?」と質問されると「私、おばあちゃんがよく見てくれていたので、両親が仕事の時に。おばあちゃんのご飯が大好きで、今でも煮物を作って送ってもらっています」。心根が優しくて気配りができ、言葉使いが美しく、仕草は柔らかく…。浜辺の魅力の一端には「おばあちゃんっ子」が作用しているように思える。
さてさて、朝ドラ人気の立役者として、また今回の「平野レミの早わざレシピ」での立派な立ち振る舞いも踏まえて考えるに、今年の「紅白歌合戦」の紅組の司会者は、NHKへの貢献度という意味でも「浜辺美波で決まり!」と思うのだが、どうだろうか。
(堀江南)