健康診断で「血液が濃い」と指摘された経験はないだろうか。もし該当していれば、血液中の赤血球の濃度が高くなる「多血症」という病気の可能性がある。
「多血症」は、頭痛やめまい、耳鳴り、顔面の紅潮などの症状があるが、自覚症状がなく、健康診断での採血検査によって発見されるケースが多い。病気が進行して赤血球数が大きく増加すると、皮膚が赤くなる、目の充血、高血圧といった症状も現れる。
「多血症」は「絶対的赤血球増加症」と「相対的赤血球増加症」に分類される。前者は、赤血球数自体が増えている状態を指す。原因によって「真性多血症」と「二次性赤血球増加症」に分けられる。
「真性多血症」は、血球を作る造血幹細胞に異常が発症して、赤血球が増えてしまうのだ。日本において「真性多血症」の発症率は、10万人に2人で、50~60代の男性に多く見られるという。
「二次性赤血球増加症」は、高地滞在や心臓疾患、肺疾患や喫煙などが原因で、造血ホルモンである血中エリスロポエチンの濃度が高くなり、赤血球が増える。マラソンなど長距離走の選手が行う高地トレーニングは、このメカニズムを利用して、赤血球を増やし、体の酸素運搬能力を高めている。
一方、後者の「相対的赤血球増加症」は、赤血球数自体は増えていないが、血液中の水分量が減っているため、相対的に血液中に占める赤血球の量が増えているケースを指す。脱水やストレス、喫煙習慣などが原因で引き起こされるため、生活習慣の改善を意識することで予防効果が期待できる。
もし、健康診断で「多血症」の可能性を指摘された際は、内科や血液内科を受診して詳しい検査が必要である。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。